早稲田大学マスコミ研究会

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My Hero, Your Hero.

 もうとっくに気付いていた。アニメやラノベに出てくるような主人公にはなれない。幼い頃は、本などに出てくる主人公に憧れたし、仮面ライダーのベルトは全種類そろえていた。勇気を貰い、情熱や努力の大切さ、色んなモノを教わった。カッコいい、俺もあんな風になりたい……。

 

 でもそんなモノは幻想だ。幻想にしかすぎないのだ。高校生になり、ライトノベルなんかを読むこともあった。ファンタジー世界を大冒険して、出会った女の子たちに惹かれて……。都合が良すぎる話だと思いつつも、どこかにそんな冒険を諦めきれない自分がいた。厨二病をいつまで引きずっているのかと自分自身を馬鹿にしつつも、高校生活を普通に過ごした。

 

 安易にトラックに轢かれて異世界転生だとか、高校でラブコメが始まるという訳でもなく普通に大学に進学した。知識を蓄えることが好きだったし、いつでも異世界転生して内政でチート出来るように考えていたからか、ある程度レベルの高い大学に進学することが出来た。この時点でもう諦めていた。アニメは友人と感想を共有するために見るが、主人公への憧れは消えていた。普通に大学でGPAを稼ぎつつ、バイトやインターンで経験を積みながら就活をした。

 

 就活も無事にうまくいって、そこそこの企業に入社した。社会人生活は忙しく、もはやアニメすら見なくなり、そもそも自分が憧れていた主人公たちのことなど思い出せなくなっていた。社会人生活を続けていく内にそろそろ身を固めるべきかと思い、大学の頃から付き合っていた彼女と結婚することにした。みんなのヒーローにはなれなくても、彼女を一生守れるようなヒーローでいることを決意した。

 

 結婚も決まり、彼女を自分の親へ紹介するために実家に帰った。幼少期のやんちゃ時代や、中高生時代のオタク趣味を知っていた両親は、彼女を連れてきたことに驚いていたが、とても喜び歓迎してくれた。昔の自分の部屋を見られ少し恥ずかしい思いをしていたら、彼女が一つの紙を見つけた。自分の小学五年生の時の「しょうらいのゆめ」が書かれたプリントだ。その「しょうらいのゆめ」にはもちろん「かめんライダーみたいなひーろー」と書かれていた。彼女はそれを見てクスリと笑いながら言った。

 

「ヒーローなんかじゃなくていいから、これから先も私とこの子を守り続けてね。」