「この新聞部にはヘン人が多すぎる⁉」
『この新聞部にはヘン人が多すぎる⁉ ~プロローグ~』
「それでは、ネタ出し会議を始める。この二週間で、みんなには学校中のネタを集めてもらった。その中から自分が記事にしたいネタを発表してもらい、みんなで検討したいと思う」
「お~、希ちゃん、なんか部長感出てるじゃん」
「おい、梨沙。私はお前の先輩なんだぞ。しかも、三年生が引退して、私は部長になったんだ。威厳を保つためにも、少しは敬語を使えよ」
「え~、希ちゃんは希ちゃんだし。でも、確かに部長なんだもんね~。私も少しは態度改めないとね」
「やっと分かったか。私は部長。この新聞部の長にして、学校の闇を暴くもの」
「感服いたしました、部長。今までの非礼深くお詫び申し上げます。そして、今日も小さくてとてもお可愛いですね」
「梨沙、お前また私のこと小さいってバカにしたな!私が一番気にしていることを言いやがって。絶対ゆるさん!」
「あはは、やっぱり希ちゃんは希ちゃんだ。」
やっぱりいつものパターンか、と慣れすぎて音の鳴らないほどの極小のため息をつきながら私は思った。
部長の名前は、大空希。学年は二年生で、私より一つ上で先輩だ。何事もテキパキこなしてとても頼りになる先輩なんだけど、身長が小学生並みに低いことにコンプレックスを抱いている。
その部長を全く敬わず、マスコットキャラクターのように扱っているのが、桜田梨沙。私と同じ一年生だ。元気ハツラツって感じの活発な女の子で、小学校からの私の幼馴染だ。
そんな二人をもう一人の先輩が仲裁に入った。
「もう、二人ともいい加減しなさい。こんな様子じゃ会議が全然進まないわよ」
「一花~。でも、梨沙が、梨沙が私のことをバカにするから」
と母親に叱られすねた子供のように部長は口を尖らせた。部長の母親的存在であるこの人が、副部長の凛堂一花。二年生だ。母親のような優しい包容力を持つ一面、謎に包まれた取材ルートで人の弱みを握り操る策士でもある、油断ならない先輩だ。正直言って、私は副部長との距離の取り方がまだわかっていない。
「はいはい、分かったわ。このチョコレートあげるから、機嫌直してよ」
そう言って、副部長は鞄からチロットチョコを取り出した。部長は生粋のチョコ好きで、中でもチロットチョコが大好物だ。その取り出されたチロットチョコを見た部長は、ダイヤモンドのように目をキラキラに輝かせた。
完全に飼い主と飼い犬の関係だ、と私は思ったが、口に出したらややこしくなりそうなので、麺を吸い込むようにそれを引込めた。それにしても、副部長は本当に部長の扱いが上手だ。
「そ、そんなもので私を買収しようとしても無駄だからな。で、でも、ここらで手を打たないと会議が進まないからな。今日は、チロットチョコに免じて許してやる。梨沙、私の大人な対応に感謝するんだな」
と部長は言ったが、その表情はとてもニヤついていた。
「は~い、すいませんでした~」
と梨沙は、いつものように軽いノリで謝罪の言葉?を述べた。
「梨沙、部長にちゃんと謝ったほうがいいんじゃない?」
「あはは、楓は心配性だなぁ~。私と希ちゃんの仲だから大丈夫だよ。それに、あの状態の希ちゃんには何も聞こえないよ」
と梨沙は部長を指さした。
部長はチロットチョコをわんこそばのように何度もおかわりし、口いっぱいにほおばっていて、副部長はそんな部長を笑顔で見守りながら頭をなでていた。
「部長、完全に飼いならされている……威厳が、線香花級にすぐに消え去ってるし」
「別にいいじゃん。希ちゃんが子供っぽくてかわいいのは事実だし、役職にこだわらず今まで通り楽しく活動するのがいちばんだよ」
と今日一番のはじける笑顔で梨沙ちゃんは語った。
「そういえば、今日小林さんは?」
「さっきメッセージで、今日は休むって連絡来たよ。今日は黒魔術の研究がどうこうってはなしだったかと」
小林さんは、私や梨沙ちゃんと同じ一年生で、小林っていう名前しか名乗っていなくて、それが本名かどうかも分からない変わった人だ。黒魔術?などのオカルトが好きみたいだが、私にはよくわからない。そして、新聞部の活動を欠席するときは新聞部のグループメッセージではなく、なぜか私の個人メッセージに連絡してくる。そんな不思議な彼女だが、一番の謎はオカルト研究会ではなく新聞部に入部したことだ。まぁ、分からないこと考えても仕方ないけどね。
そうだ、私の自己紹介がまだでしたね。私の名前は、元町楓。ここ桜ケ丘女子高等学校に今年の四月に入学した、高校一年生。この新聞部には、半ば強制的に入部させられたんだけど、そこら辺の話はまた今度ね。
「楓~、そろそろ会議やるぞ~」
「はーい部長、今行きまーす」
そんなこんなで『今日も一日、桜ケ丘女子高等学校新聞部、活動開始です!』