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ミラクル元年って何よ
みなさんは『地平を駆ける獅子を見た』をご存知だろうか。
埼玉西武ライオンズの球団歌として1979年に生まれて以来、多くのファンに親しまれてきた。みなさんも義務教育の過程で一度は習ったことがあるだろう。
松崎しげるの力強い歌声もさることながら、注目すべきはその歌詞だ。
「陽は昇り 風熱く 空燃えて 地平を駆ける獅子を見た」
ライオンズの球団マスコットは手塚治虫の『ジャングル大帝』に登場するレオだ。レオがアフリカの大自然を描写しながら、過酷な環境の中でも力強く生きるレオを表現している。
「激しく 雄々しく 美しく たて髪 虹の尾を引いて」
レオのたくましさを形容詞を並列して表現し、最後にたて髪がなびいていることを表すことでレオが駆け抜けている情景を想起させる。
「アアア ライオンズ ライオンズ ライオンズ ミラクル元年 奇跡を呼んで」
は????????
いやいや待て、ミラクル元年ってなに? そんな言葉聞いたことないぞ。
さすがにこんな意味不明な言葉、何か意図があって使ったに違いない。さっそくネットで検索をかけると、既に調べている人がいた。その人によると次のようなことだそうだ。
「1979年のライオンズファンブックを開くと「地平~」について作詞の阿久悠さんはこうコメントを寄せていました。
『最初に“ミラクル元年”という言葉が浮かんだ。大人も子供も、あまり夢がなさすぎますからね。現代は。でも心の底では、だれもが“奇跡”を願っているはずだと思う。楽しく、スカッとした“奇跡”をね。西武ライオンズがそんな“奇跡願望”をきっとかなえてくれるに違いない。そう思いながら一気に詩を作って行きました』」
(https://lineblog.me/muroi/archives/8386011.html 様より引用)
だからミラクル元年ってなんだよ!!!!!!!
絶対語感だけで作詞しただろ!!!!!!!
そう思って生きていた2019年。平成の時代は終わりを告げ、新しい元号には「令和」が選ばれた。
一方ライオンズはというと、エースの菊池や打線の要だった浅村がチームから離脱し、投手の防御率はリーグ最下位と成績は低迷。一時期チームは5位に沈むなど、ほとんどのファンは優勝を諦めていた……はずだった。
いざ8月の中旬を迎えると、中村の好調により打線につながりが生まれ、とたんに勝利を重ね始める。そして9月には2位のソフトバンクを下し、2年連続の1位に返り咲いたのだった。投手成績がリーグ最下位での優勝は(2018年のライオンズを除くと)01年の近鉄までさかのぼることになる。
野村克也の名言を引くまでもなく「野球は投手(が重要)」である。それなのに優勝してしまうライオンズ。
あっ、ミラクル元年ってそういうことだったのね……。