早稲田大学マスコミ研究会

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『緊急! 初詣対策会議』ペンネーム:ぺいぺい

「それでは、会議を始める。来たる令和四年まであと三日となった。新年を迎えると、多くの人間たちは初詣を行い、我々に膨大な量の願いを送りつけてくる。そこで我々、神々がどのようにして我々のキャパシティーを凌駕した量の人間たちの願いを叶えてやるかについて話し合いたいと思う。何か意見があるモノはいるか?」

 

 と議長を務めるエビのように長い鬚をこしらえた北地区代表の神が言った。

 

「そうですね。今年も、くじ引きでいいのでないでしょうか」

 

 そう発言したのは、知的に見えるからという理由だけで伊達メガネをしている西地区代表の神だ。実はそこまで賢くない。

 

「毎年毎年、あまりにも人間たちの願いが多すぎて、私の地区の神々からも疲弊と不満の声が続出しています。くじ引きで私たちが無理なく処理できる量の願いを叶えることがベストだと思います」

 

 と東地区代表の神は言った。

 

「そうなんですよね。実際、僕の地区で一昨年、拝んでくれた人間たちの願いをすべて叶えようと奮起した神がいたのですが、人間たちの間で必ず願いが叶うと話題になってしまって、初詣シーズン終了後も参拝者が後を絶たなく、過労死しかけてましたよ」

 

 と東地区代表の神の意見に同意するような発言をしたのは、温和な性格で部下からの信頼も厚い南地区代表の神だ。

 

「では、東、南地区代表の神は、叶える人間たちの願いをくじ引きで決めるという意見なのじゃな」

 

 そう議長が二柱の神の意見をまとめた時、

 

「そもそも、人間たちの願いを叶えんでもええんちゃうか?」

 

 とコテコテの関西弁で過激な意見を述べたのは、西地区代表の神だ。歯に衣着せぬ発言が多く、暴君とも称される神であるが、カリスマ性はトップクラスで、彼を慕う部下は数多くいる。

 

 西地区代表の神は続けて、

 

「あいつら人間は煩悩の塊やで。大みそかに除夜の鐘とかいって煩悩を祓ってるみたいやけど、その数時間後には煩悩満載の願いを俺たち神に送りつけてきやがる。しかも、俺は商売繁盛の神やってゆうてんのに、恋愛成就やら健康祈願やら専門外の願いをつきつけてくるやつもおる。神やからって何でもできる訳ちゃうわ。そんなめちゃくちゃなやつらの願いをなんで叶えたらあかんねん、分けわからんわ!」

 

 とキレ気味に言った。

 

「まぁまぁ落ち着きなさい。西地区代表の神の言うことは一理あるが、我々神々は人間たちの信仰心を糧に生きておる。だから、道理に合わなくとも人間たちの願いを多少なりとも叶えてやらんとワシら自身も消滅してしまう危険性があるのは、西地区代表の神も分かっとることじゃろ」

 

 そう議長は西地区代表の神を諭すように言った。

 

「かといって、神々がくじ引きというある種の神頼み的な方法で叶える願いを決めるのも良くないじゃろうなぁ。どうするのが最適なのじゃろうかのう」

 

 彼ら四柱の神々は三日三晩会議を行ったが、結局これといった案を思いつかないまま新年を迎えてしまい、令和四年もくじ引きで人間たちの願いを叶えることとなった。

 

 彼ら神々が最適な対策を思いつくかどうかは、それこそ「神のみぞ知る」のだろう。