公開を自粛したい思い出No.2 お年頃
小学校4年生のころ、私は家でうさぎを飼っていた。抱っこを嫌がるうさぎも多い中で、その子は快く抱っこをさせてくれるとても人懐こい子だった。とにかく可愛くて可愛くて、三度の飯よりうさぎを愛でる、超親バカ飼い主だった私。
特に小学校四年生なんていうのは、ちょっと分別がつくようになってきて他者を意識し始める面倒くさいお年頃だ。犬や猫ではなく、うさぎを飼っているという超特殊ステータスを手に入れた当時の私は友人に、うさぎの可愛さと人懐い子さを大々的に自慢していた。
今考えるとそんなやつとは絶対に友達になりたくない。
ある晩いつものようにうさぎと遊んでいるとき、私は天才的なアイデアを思いついてしまったのだ。
その名も、ちょんまげ作戦。
うさぎを抱っこして、自分の頭の上にのせたら、ちょんまげのようになるのではないか?一体化してお侍さんごっこでもやったら絶対楽しいはず。
おとなしい子だし、きっとできる。
早速うさぎを抱っこした。ここまでは順調だった。
だが、いざ自分の頭の上までうさぎを持ち上げたとき、高くて怖かったのか突然うさぎが暴れだしてしまったのだ。
もう大惨事。うさぎがけがをしなかったのが不幸中の幸い。うさぎのつめにひっかかれてしまった私の額には、おでこを横断して日本列島のような形のみみずばれのあとがついてしまった。
当時おでこ丸出しヘアスタイルの私にはどうあがいてもその傷を隠して翌日学校に行くことは不可能だった。とにかく少しでもましな状態にしていかなければ。ありとあらゆる手段を講じた。しかし翌日跡はしっかり残ってしまっていた。
「手は尽くしたのですが……」って言うときのお医者さんの気持ちってこんな感じなのかしら。
ばんそうこうで収まるサイズじゃなかったので仕方なく傷はそのままで登校。
案の定周りからは「その傷どうしたの?!」と片っ端から興味を持たれる。
さて、なんて答えようか。正直に「うさぎにひっかかれて。」といおうか。しかし私はすでに我が家のうさぎのいい子ちゃんさを声高に言ってしまった。その手前正直に話すことは到底できない。
考えに考え抜いた結果私はこう言った。
「弟と喧嘩しちゃって」
こうして私の弟にはしばらくの間、荒々しいイメージがつくことになった。
ごめんな、弟よ。