早稲田大学マスコミ研究会

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「この新聞部にはヘン人が多すぎる⁉」

『この新聞部にはヘン人が多すぎる⁉ ~プロローグ~』

 

「それでは、ネタ出し会議を始める。この二週間で、みんなには学校中のネタを集めてもらった。その中から自分が記事にしたいネタを発表してもらい、みんなで検討したいと思う」

「お~、希ちゃん、なんか部長感出てるじゃん」

「おい、梨沙。私はお前の先輩なんだぞ。しかも、三年生が引退して、私は部長になったんだ。威厳を保つためにも、少しは敬語を使えよ」

「え~、希ちゃんは希ちゃんだし。でも、確かに部長なんだもんね~。私も少しは態度改めないとね」

「やっと分かったか。私は部長。この新聞部の長にして、学校の闇を暴くもの」

「感服いたしました、部長。今までの非礼深くお詫び申し上げます。そして、今日も小さくてとてもお可愛いですね」

「梨沙、お前また私のこと小さいってバカにしたな!私が一番気にしていることを言いやがって。絶対ゆるさん!」

「あはは、やっぱり希ちゃんは希ちゃんだ。」

 やっぱりいつものパターンか、と慣れすぎて音の鳴らないほどの極小のため息をつきながら私は思った。

 部長の名前は、大空希。学年は二年生で、私より一つ上で先輩だ。何事もテキパキこなしてとても頼りになる先輩なんだけど、身長が小学生並みに低いことにコンプレックスを抱いている。

 その部長を全く敬わず、マスコットキャラクターのように扱っているのが、桜田梨沙。私と同じ一年生だ。元気ハツラツって感じの活発な女の子で、小学校からの私の幼馴染だ。

 そんな二人をもう一人の先輩が仲裁に入った。

「もう、二人ともいい加減しなさい。こんな様子じゃ会議が全然進まないわよ」

「一花~。でも、梨沙が、梨沙が私のことをバカにするから」

と母親に叱られすねた子供のように部長は口を尖らせた。部長の母親的存在であるこの人が、副部長の凛堂一花。二年生だ。母親のような優しい包容力を持つ一面、謎に包まれた取材ルートで人の弱みを握り操る策士でもある、油断ならない先輩だ。正直言って、私は副部長との距離の取り方がまだわかっていない。

「はいはい、分かったわ。このチョコレートあげるから、機嫌直してよ」

 そう言って、副部長は鞄からチロットチョコを取り出した。部長は生粋のチョコ好きで、中でもチロットチョコが大好物だ。その取り出されたチロットチョコを見た部長は、ダイヤモンドのように目をキラキラに輝かせた。

 完全に飼い主と飼い犬の関係だ、と私は思ったが、口に出したらややこしくなりそうなので、麺を吸い込むようにそれを引込めた。それにしても、副部長は本当に部長の扱いが上手だ。

「そ、そんなもので私を買収しようとしても無駄だからな。で、でも、ここらで手を打たないと会議が進まないからな。今日は、チロットチョコに免じて許してやる。梨沙、私の大人な対応に感謝するんだな」

と部長は言ったが、その表情はとてもニヤついていた。

「は~い、すいませんでした~」

と梨沙は、いつものように軽いノリで謝罪の言葉?を述べた。

「梨沙、部長にちゃんと謝ったほうがいいんじゃない?」

「あはは、楓は心配性だなぁ~。私と希ちゃんの仲だから大丈夫だよ。それに、あの状態の希ちゃんには何も聞こえないよ」

と梨沙は部長を指さした。

 部長はチロットチョコをわんこそばのように何度もおかわりし、口いっぱいにほおばっていて、副部長はそんな部長を笑顔で見守りながら頭をなでていた。

「部長、完全に飼いならされている……威厳が、線香花級にすぐに消え去ってるし」

「別にいいじゃん。希ちゃんが子供っぽくてかわいいのは事実だし、役職にこだわらず今まで通り楽しく活動するのがいちばんだよ」

と今日一番のはじける笑顔で梨沙ちゃんは語った。

「そういえば、今日小林さんは?」

「さっきメッセージで、今日は休むって連絡来たよ。今日は黒魔術の研究がどうこうってはなしだったかと」

 小林さんは、私や梨沙ちゃんと同じ一年生で、小林っていう名前しか名乗っていなくて、それが本名かどうかも分からない変わった人だ。黒魔術?などのオカルトが好きみたいだが、私にはよくわからない。そして、新聞部の活動を欠席するときは新聞部のグループメッセージではなく、なぜか私の個人メッセージに連絡してくる。そんな不思議な彼女だが、一番の謎はオカルト研究会ではなく新聞部に入部したことだ。まぁ、分からないこと考えても仕方ないけどね。

 そうだ、私の自己紹介がまだでしたね。私の名前は、元町楓。ここ桜ケ丘女子高等学校に今年の四月に入学した、高校一年生。この新聞部には、半ば強制的に入部させられたんだけど、そこら辺の話はまた今度ね。

「楓~、そろそろ会議やるぞ~」

「はーい部長、今行きまーす」

 そんなこんなで『今日も一日、桜ケ丘女子高等学校新聞部、活動開始です!』

『スノーグラス』

「そういうことだってあるのよ」

 遠い記憶の中で彼女は言った。彼女の言葉は僕の心で渦巻く深い暗闇の中において確かな道を照らし出すことができた。捉えどころのない、そして相手を突き放すようで、でも発する言葉の一つ一つには肌で感じられるほどの温かさがあった。いったいどれほど救われたのかわからない。それは彼女がもういなくなってしまった後でも同じだ。僕はこれからも彼女の幻影と共に生きていくのだろう。いや、そうでなければいけないのだ。

 

「今日で5年」と心の中でつぶやいて、僕は彼女が眠る墓石の上に青色の縁をした眼鏡を置いた。目を瞑ると彼女との思い出が鮮明に蘇った。甘いシャンプーの匂い、髪の質感、体の温もり。脳内の金庫の鍵を一度開いてしまえば、自動的にそして強制的に思い出されてしまう。

 目を開けて一刻前に置いた眼鏡を見ると、レンズの表面には綺麗な球体の形をした一滴の水滴が垂れていた。僕は無意識のうちに膨大な記憶の中から6年前の冬の記憶だけを取り出そうとしていた。それは珍しく東京に雪が降った12月の話だ。今から6年前、彼女は23歳で、僕は何も知らない19歳だった。

 

「何? 見えない?」

 20メートルほどしか離れていない駅の案内板を読むことができない僕を見て彼女は驚きと困惑の表情を浮かべた。

「あんな近くの文字も読めなくてどうすんのよ。じゃあこれは?」

 そう言って彼女は僕の顔の前にピースサインを作った。

「2です。そのくらい分かりますよ。最低限普通の生活に支障が出ないくらいには見えているから大丈夫です」

「近くにある案内板を読めないことを人は生活に支障があるって言うのよ」

 僕が何も言えずにいると、雲の多い夜の空から雪が降りてきた。もうこの話はやめてくれという心の中の叫びが神様に届いて、話題をそらすために雪を降らせてくれたのではと考えた。救世主としての雪。それも悪くない。

 僕たちは近くにあったベンチに座って白い雪を体いっぱいに浴びることにした。僕も彼女も、雪が大好きだった。

「さっきの話だけどさ。なんで眼鏡を掛けないわけ? こないだ君がパソコンをいじってた時、眼鏡かけるんだって思ったんだよね、そういえば。持ってるんならすればいいじゃない」

 どうやら雪は救世主でなかったらしい。むしろ、その逆だった。彼が引き連れてきた本格的な寒さによって僕はいつもの冷静さを欠いていた。

「授業を受けるとか、細かい作業をするときには掛けますよ。でも、それ以外の時にはつけたくありません」

「なぜ?」

「眼鏡を掛けていると疲れるんです。どうでもいい細部までくっきり見えてしまうというか。裸眼のままでいると世界がぼやけて見えます。はっきりと見ることのできる手元と見ることのできない遠くの世界の間に境界線みたいなものがあって、内側の領域は完全に僕の世界です。自分以外の何者も干渉しない、安らぎの空間。僕には必要なものです」

 勢いに任せて言ってしまうと、段々と自分の頬が火照っていくような感覚があった。迷惑な寒さを持ってしても、それを抑えることはできない。

「きっと何か辛いことがあったのね。眼鏡は今持ってる?」

 僕は素直に頷く。

「じゃあ掛けてみて。そして見るの、目の前にどんな世界が広がっているのか。大丈夫、私がいるから」

 なぜだかわからないが、僕はどうしようもなくそこに何があるのかということを確かめたくなった。そんなことを思うのは目が悪くなってから初めてのことだった。リュックから眼鏡を出して掛ける。彼女は僕の頬に自分の頬をくっつけて、そして手を重ねた。

 矯正が入ると急に人工的な光が強くなったように感じられて、思わず目を細めてしまった。頭に付いた雪を払いながら小走りで駅に向かうサラリーマン、幸せそうに手を繋ぐ恋人たちに、ヘッドフォンで音楽を聴きながら寒そうに手をコートのポケットに入れる青年。駅前には実に多くの、そしてさまざまな種類の人がいた。

「ほら、こんなに美しいの」

 イルミネーションで飾られた駅前の光は雪のせいもあってか今まで見たどんなものよりも綺麗に感じられた。

「ほら、こんなに美しい」

 自然と出た言葉に気がつくことができなかった。それほどまでに、僕はその光景に見惚れていた。

「逆に私は少し疲れたかな」

 彼女は目に入っていたコンタクトレンズを両眼とも外してしまうと、僕の腕をしっかり掴んだ。

「帰ろっか。私、裸眼の視力全然ないから誘導してよね」

 僕たちがベンチを立った時、すでに雪は降りやんでいた。結局、僕が彼女を家まで送り届けるまで彼女は持っていたであろう眼鏡を掛けなかった。道中、彼女は眼鏡を人前で掛けるのが極端に嫌いだと打ち明けた。その理由について訪ねても、特につかみどころのない返事が返ってくるだけだった。

「君に眼鏡を掛けない理由があるように、私にも眼鏡を掛けたくない理由があるのよ。それはあり得ないほど似合わないからかもしれないし、幽霊が見えるようになってしまうからかもしれない。でも、みんな同じじゃつまらないでしょ? 誰かが言っていたわ。全員が白人じゃ退屈でしょって。そういうことだってあるのよ」

 

 彼女がトラックに轢かれて死んでしまったのはそれからちょうど一年くらいが経った時のことだった。彼女の目がその時裸眼であったのか矯正されていたのかを僕は知らない。別にそのことを警察に聞こうとも思わなかったし、それを知ってどうなるんだという思いが強かった。

 

「ようやく決意が固まりました。僕はもう逃げませんよ」

 そう言い残して僕は墓地を後にした。

 自分の車に乗る前にコンタクト用の目薬を両目に点そうと思って上を見上げると、今年最初の雪が天からゆっくりと降りてくるところだった。彼女からの贈り物としての雪。それも悪くない。

My Hero, Your Hero.

 もうとっくに気付いていた。アニメやラノベに出てくるような主人公にはなれない。幼い頃は、本などに出てくる主人公に憧れたし、仮面ライダーのベルトは全種類そろえていた。勇気を貰い、情熱や努力の大切さ、色んなモノを教わった。カッコいい、俺もあんな風になりたい……。

 

 でもそんなモノは幻想だ。幻想にしかすぎないのだ。高校生になり、ライトノベルなんかを読むこともあった。ファンタジー世界を大冒険して、出会った女の子たちに惹かれて……。都合が良すぎる話だと思いつつも、どこかにそんな冒険を諦めきれない自分がいた。厨二病をいつまで引きずっているのかと自分自身を馬鹿にしつつも、高校生活を普通に過ごした。

 

 安易にトラックに轢かれて異世界転生だとか、高校でラブコメが始まるという訳でもなく普通に大学に進学した。知識を蓄えることが好きだったし、いつでも異世界転生して内政でチート出来るように考えていたからか、ある程度レベルの高い大学に進学することが出来た。この時点でもう諦めていた。アニメは友人と感想を共有するために見るが、主人公への憧れは消えていた。普通に大学でGPAを稼ぎつつ、バイトやインターンで経験を積みながら就活をした。

 

 就活も無事にうまくいって、そこそこの企業に入社した。社会人生活は忙しく、もはやアニメすら見なくなり、そもそも自分が憧れていた主人公たちのことなど思い出せなくなっていた。社会人生活を続けていく内にそろそろ身を固めるべきかと思い、大学の頃から付き合っていた彼女と結婚することにした。みんなのヒーローにはなれなくても、彼女を一生守れるようなヒーローでいることを決意した。

 

 結婚も決まり、彼女を自分の親へ紹介するために実家に帰った。幼少期のやんちゃ時代や、中高生時代のオタク趣味を知っていた両親は、彼女を連れてきたことに驚いていたが、とても喜び歓迎してくれた。昔の自分の部屋を見られ少し恥ずかしい思いをしていたら、彼女が一つの紙を見つけた。自分の小学五年生の時の「しょうらいのゆめ」が書かれたプリントだ。その「しょうらいのゆめ」にはもちろん「かめんライダーみたいなひーろー」と書かれていた。彼女はそれを見てクスリと笑いながら言った。

 

「ヒーローなんかじゃなくていいから、これから先も私とこの子を守り続けてね。」

黒点 作:親王

二〇〇四年十一月十三日

 

 透き通った赤色の景色の中で、それは異物として目に飛び込んできた。日の光を通して、薄赤く行燈のように光る粒の中に、黒々とした点が一つだけ打たれていた。古い印刷機で、インクが零れたときみたいに。

「あれ、なんだろ」

 私は橋の上で立ち止まって、指でその黒点を指し示した。どれよ、どれよ。恋人が私の指先を目で追った。

「ほら、あれ。黒いの」

 よく見ると黒い点は、点というより線だった。印刷機というより、私が手紙をしたためているときに零してしまう、不格好な形の黒だった。

「あ、あれか」

 恋人も腕を上げて、黒い異物を指した。そうそう、あれ。私は頷いて、

「なんだろうね、あれ」

 と促した。

「えーあー」 

 恋人は目を凝らしたり、背を伸ばしたり縮めたりして、黒い異物を観察した。その挙げ句、「靴下じゃね?」と意外すぎる答えが恋人の口からほとばしった。

「くつしたぁ?」

 おかしくって、私は恋人の横顔を見返した。「そんなことあるわけ……

 しかし恋人の横顔はいたって真剣で、私は言いさした。まさか本当に、と思って、もう一度黒い異物を見上げた。

 なるほどそれは、黒い靴下だった。細枝に引っかかって、だらんとだらしなくぶら下がっている。紅葉を台無しにするような、汗臭さがここまで漂ってきそうな、よれた靴下だった。

 でも、なんであんなところに。

「どうやったら引っかかるんだろうね、あんな高いところ」

 恋人は笑って、私に顔を向けた。

「さあ」

 私も笑って、首を傾げる。

 私たちが立ち止まって上を見上げていたものだから、他の見物客も私たちの近くで立ち止まって、上を見上げていた。

靴下だよね、あれ。後ろのカップルが、そう呟いたのが聞こえた。

「行こうか」

 恋人は言って、私の腰に腕を回した。

「うん」

 私は湿っぽく頷いて、恋人に身を寄せた。紅葉が彩る橋の上を、静かに歩き出した。

 

九ヶ月前(二〇〇三年二月十四日)

 

 橋の上は、風が強く吹いた。夜の暗闇に黒々と浮かぶ枝木がわさわさと揺れた。

 寒かった。身を切るような寒さだった。

 二月十四日の早朝。バレンタインデー。

 でも俺の手に握られていたのはビターチョコレートでも、チョコチップクッキーでもなく、びしょびしょに濡れた黒い靴下だった。

「バレンタイン前夜自己防衛会議」に行くことが決まったのは、二月十日だった。実際に誘われたのは二月一日だったが、そのときは彼女がいたので、誘いのメールは無視していた。

『俺も、行くわ』

 メールを返すと、すぐに詳しい日時と場所の情報が送られてきた。羅列されたメンツを見ると、中学から地元に居残っている愉快な仲間たちの名前がずらっと並んでいた。

 みんな見た目は変わっていた。でも変わったのは見た目だけで、しかも少し清潔感がなくなっただけで、中身も地位も大して変わっていなかった。

「お前、髭それよ」

「うるせえ」

 隣に座った小太りの友人の髭を触ると、友人は顔を顰めた。俺の手をはじいて、俺がいじくった髭を撫でるように整える。

「この髭がカッコいいってよく言われるんだ」

「誰に」

「職場の女の子に決まってるだろ」

「いま無職だろ」

「うるせえ」

 友人は一気にジョッキを干した。

「いいねえ」

この会の主催者らしいノッポの友人が、愉快そうに手を叩く。

 記憶はそこから曖昧になる。なんとなく楽しかったには覚えている。なんとなく不快で、やるせない気持ちに呑み込まれそうになったのも、覚えている。すぐ隣の侘しい気持ちに取り込まれないように、必死に笑い飛ばしたのを、覚えている。

 でも。

 気持ち悪くなって、橋の下の川に吐いた俺は、そのまま欄干を背もたれに腰を下ろした。

 でも、この靴下は、いったい誰のだろうか。

 俺は、左手のくたびれた黒靴下を見つめた。芯までびっしょり濡れていて、冷たくて重たい。

 今度は視線を、伸ばされた自分の足にスライドする。両方の足にはしっかり靴下がはめられていて、しかも色は白だった。

「しーらねっ」

 俺はそう吐き捨てて、手に持っていた靴下をほいと投げ上げた。

 

十ヶ月後(二〇〇四年十二月二十四日)

 

「好きな人が、できたんだ」

 ちょうど一ヶ月前、海の見える公園のベンチで、そう切り出された。手を繋いで、二人で海を見ていたところだった。夜だった。波の音だけが、耳に流れてくる。

「え」

 耳を疑った。私は彼に向き直る。向き直った途端、彼は重ねていた手を引いて、視線をベンチ下の下生えにやった。

「どうして」

 私は彼の腿に手を乗せて、身を乗り出す。すると彼は同じだけ身をのけぞらせて、

「ごめん。別れよう」

 とそっぽを向いて言った。首のあたりに、顎の影が小さくできていた。こんなところにこんな形の影ができるのか、この人は。

「まって、それはひどいよ」

「ごめん」

「どこで」

「職場の人。ごめん」

 彼の声は、想像以上に平板だった。もう、とりつく島もない。私は彼の中で、既にどうでもいい存在になってしまっている。ついさっきまで喜びも悲しみも共有していると思っていた存在は、その「好きな人」をこしらえた時点で、私の隣から音もなく消えていたというのか。

「もう、行かなきゃ。終電が」

 彼は言って、ベンチから腰を上げた。彼の腿に置かれていた私の手は、力なく冷たいベンチに滑り落ちる。

「まって」

 彼の背中に、手を伸ばした。けれど彼は私と並んで歩くときよりも早足で、服の裾さえ掴めなかった。

 

 それから、一ヶ月。クリスマスイブの日。

 私は、わざと人通りの少ない道を選んで家に帰っていた。

 いつもの大通りには、眩しいほどのイルミネーション施されていて、前も横も後ろもカップルしか見当たらない。そんな道を、失恋ほやほやの心持ちで歩けるほど、私はタフではなかった。

 ちょうど橋の上を歩いているときだった。冷たくて強い風が、弱った私を乱暴に吹いた。

 ざわざわ、という枝木の音に、パキパキ、という音が混ざった。

 私はベージュ色のコートに顔をうずめ、足をはやめた。

 そのとき、向かい側から背の高い男性が歩いてくるのが見えた。私と同じようにコートに顔をうずめて、ポケットに手を突っ込んで歩いている。

 私は上目遣いを滑らせて、男性の顔を確認した。髪の毛はがっしりとワックスでセットされていて、鼻は高く目は大きかった。

 どうせ、彼女持ち。

 ひねくれた思考をしながら、横をすれ違おうとする。少しだけ左に歩幅をずらして、男性との間にスペースを作った。男性から視線を外して、歩幅は変えずに、すれ違う。

 ぼとん。

 そのときだった。私と男性の間に、何かが落ちた。音はなかったが、たしかにぼとん、と何かが落ちたのだ。

 私は立ち止まり、落ちたものを凝視した。最初は何かわからなかったが、見ているうちに、それは非常に見覚えのある形をしていることに気がついた。

 靴下だ。

 私は反射的に上を見上げた。見上げた途端、男性の顔が視界に入って、そこで視線を止めてしまった。

「どうも」

 男性もちょうど上を見上げようとした瞬間らしく、不覚にも目があってしまった。

「こ、こんばんは」

 私は小さく、会釈する。

 それから、地面に落ちた靴下に再び視線を落とす。殺風景なコンクリートの上に、黒い靴下が浮かんで見えた。

「これ、いま落ちてきましたよね」

「ええ、はい」

 男性を見ると、男性も靴下を凝視していた。私の顔は見ずに、姿勢を低くして靴下に顔を近づけている。

「靴下、ですね」

 男性は、私の顔を下から見上げるかたちで言った。その顔には、あどけない笑みが浮かんでいる。

「みたい、ですね」

 私は辛うじて頷いた。

「なんか、気持ち悪いですね」

 男は姿勢を元に戻した。目は依然として、靴下に向けられている。

「誰のでしょうね。交番に、届けた方がいいのかな」

 男性はつま先で、黒い靴下をつっついた。男性の黒い革靴に、靴下は左右になぶられている。

「サンタ……

 私は料理される靴下を見ながら、ほとんど無意識に、ぽつりと呟いた。

「ふっ」

 男性が吹き出した。その吹き出した音を聞いて、私はかあっと熱くなった。

 なんて馬鹿なことを、口走ってしまったのだろう。

「ち、違うんです」

「面白いこと言うんですね」

 男性は、コートの袖で口元を隠しながら、くつくつと笑った。細くなった目が、私の顔を捉えている。

「じゃあ、僕、友達と約束があるので」

 一通り笑い終えると、男性はひょいと手をあげて歩き出した。

 靴下は、地面にほっぽかれたままだ。

 私は遠く小さくなる背中を、しばらく見つめていた。

「ともだち」

 口の中で、そう呟いて。

『Become Zero』 作:ぺいぺい

 ジリジリジリジリジリジリジリ……

 真空空間のように音一つない静寂が満ちていた私の部屋を、始まりの合図がぶち壊した。

「ふぁ~、もう朝か」

 私は、寝ぼけているのか頭にモヤがかかり、思考がままならない状態で鳴り続けていた目覚まし時計を止める。自分の仕事を全うし、これでもかと言わんばかりの我が物顔で、ベットの端に仁王立ちしている目覚まし時計に少し苛立ちながら、眼鏡をかけた。二度寝しないように、暖かい布団をのけ、ベットから抜け出し床に足をつけた途端、全身に電流が流れた。床が氷のように冷たかったのだ。そういえば、もう十一月になっており、テレビで連日、紅葉名所が紹介されていた。冬一歩手前なのに、暖房をつけずに寝たのだから、床が冷たくなるのは当たり前か。そう思いながら、私はタンスから冬用の分厚い靴下を取り出し、履いた。普段履いている薄い靴下より、冬用の靴下は分厚くふかふかしているため、少しブルジョワな気分になれるから大好きだ。そんなふかふかの感触を楽しみながら、二階の自分の部屋から一階のリビングに降りた。

「お母さん。おはよう~……って、あれお母さんいないの?」

 いつもなら私が起きる前に朝ご飯を用意して、リビングで待っていてくれるのに、今日はそのリビングに母の姿はなかった。

「お母さ~ん、まだ寝てるの~?」

 と言いながら私は母の寝室の扉を開けたが、そこにもいなかった。

 私は、幼い頃に父を亡くして以来、女手一つで母に育ててもらっている。当然、母は生活のために、会社に出向き仕事をしており、月に二回ほど残業のため家に帰ってこない日があるのだが、そういう日は事前に母から連絡をもらっている。しかし、今日は特に連絡はなかったはずだ。

(もしかしたら、会社でトラブルが起こり残業したのだろうか?)

 そう思った私は、寝ている間に母から連絡が入っていたのかもしれないとスマホの通知を確認するため、階段を駆け上がり自分の部屋に行った。しかし、いくら探してもスマホが見つからない。今日は不思議なことが起こるなぁと思いながら、スマホ探しをあきらめ、リビングに戻りふと時計を見ると、針が7時30分を指していた。

「やっべ、遅刻するじゃん」

 私は大急ぎでキッチンにあったトーストを焼き、冷蔵庫から牛乳といちごジャムを取り出し、朝食の準備をした。そして、テレビをつけた。ニュース番組の最後にやる星占いを観てから、登校するのが私のルーティーンだ。星占いまでまだ時間があるようで、ニュースキャスターがニュースを読んでいた。

「続いてのニュースです。昨日、夕方ごろ新潟県○○町で、横断歩道を渡ろうとしていた女子高校生を大型トラックがはねた事件で、容疑者の男が逮捕されました。」

「え、これ近所じゃん」

 事故が起きた交差点は、私の家から少し行ったところで、近くに交番がある。私も登下校でよく使う道だ。このあたりにある高校は、私が通っている高校一校しかないため、被害者の女子高生は同じ学校に違いない。

(どうして、こんな重大なニュースを私は知らなかったのだろうか?)

 そう疑問に思い、昨日の記憶を思い出そうとした途端、脳を鷲掴みされたような頭痛がして思い出せない。

「沙織ちゃんや静香ちゃんではないよね?」

 そう被害者が自分の親友でないことを祈りながら、ニュースの続きを観ていた。が、次の瞬間、全身を低温やけどしたように熱さと冷たさの両方をはらみながら、血の気が引いた。

「被害会われました女子高校生は、○○町に住む、加藤遥さん、一七歳。加藤さんは、搬送先の病院で今日未明、死亡が確認されました。心からご冥福申し上げます。」

 ニュースキャスターが神妙な面持ちでそう語るとともに、顔写真が放送された。私は被害者の顔と名前をよく知っていた。

 なぜなら、加藤遥は私なんだから……。

 

UNIDOL2021 Fresh ~Berry/Citrus~ 早稲田チームパフォーマンスレポート【早稲田チームコメント付き!】

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10月6日・7日に新宿ReNYでUNIDOL2021 Fresh ~Berry/Citrus~が開催された。

テーマは「フレッシュフルーツ」。 フルーツはたくさんの種類があって見た目や味、食べ方は人によって違う。出場者、観客、実行委員のすべてがフルーツを味わうように、それぞれの楽しみ方をしてほしい、という思いがこのテーマには込められている。出場チーム、メンバーの個性をフルーツの豊富な種類に喩え、チームの色と共に出場者一人一人が輝く場になってほしい、とのことだ。

 

 

UNIDOLとは

 UNIDOLとは女子大生たちによるアイドルコピーダンスナンバーワンをかけた大会で、今回はその大会の新人戦にあたる。全24チームが参加してそれぞれ素晴らしい「ユニドル」としての姿を見せてくれた。今春以降に加入したメンバーが中心かつ、まだまだ活動も制限される中で完璧なパフォーマンスにしきれなかった部分もあるかもしれない。しかし、パフォーマンスに合わせた自作ムービーの工夫や、会場の観客に向かって手を振ったり、笑顔を向けたりする様子からは、彼女たちが単にアイドルの踊りや歌をコピーするだけでなく、自身らがアイドルとして輝こうとしている様子が強く感じられた。今回、結果が振るわなかったチーム、目標を達成できたチーム、それぞれあるだろうが、次のUNIDOL本戦ではどのようなパフォーマンスが見られるか楽しみだ。



【審査方法】

パフォーマンスは各チーム7分30秒。

ダンス・表現力・個性・演出・魅了度の5項目で審査

審査員票に加えて、会場・オンライン投票の一人2票で結果を決める。

 

 

早稲田チームパフォーマンスレポート

“ももキュン☆”

今回のテーマは「卍全力可愛い卍」。先輩たちから受け継いだ全力のパフォーマンスと、新入生らしい可愛らしさ・爽やかさを武器に7人のメンバーがステージを彩ってくれました。曲ごとに変わる雰囲気も素晴らしかったです。

 

1曲目 『青春“サブリミナル”』  “=LOVE

華やかな衣装とともに登場し、1日目のトップバッターにも関わらず全く緊張を見せない笑顔と1年生とは思えない洗練されたステージでした。

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2曲目 『三回目のデート神話』  “つばきファクトリー

1曲目と違い、一転してクールな雰囲気で始まった2曲目。徐々にダイナミックになっていく踊りに心動かされました。

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f:id:waseda_Massken:20211027160726j:plain3曲目 『アッパライナ』 “天晴れ!原宿”

また2曲目から一転して、元気さを前面に押し出したステージ。全員の息が合ったパワフルな踊りは、見ているこちらが元気をもらえました。

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チャイムはLOVE SONG』  “SKE48

大声を出せないことがもどかしくなるような一緒にコールがしたくなるステージ。2人ずつ並んで踊るところがとても可愛かったです!




“夏目坂46”

“夏目坂46”は2019年に結成された坂道系をコピーするグループです。新人戦には5期生の、ほの・あすか・りり・ゆきんこ・なお・りな・せいな・まゆ・ゆいが出場。元気な笑顔とダンスで場を大いに盛り上げてくれました。

 

 1曲目 『シンクロニシティ』“乃木坂46

動きに合わせて、ひらひらと揺れるスカートが目を引く華やかなステージ。ダンスの動きがダイナミックで、とても見応えがありました。有名曲ゆえのプレッシャーもあったかと思いますが、それを全く感じさせない堂々としたパフォーマンスでした。

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2曲目 『P.I.C.』“≠ME”

1曲目とは雰囲気がガラッと変わりクールで大人っぽい楽曲。メンバーの表情も引き締まっていて、1曲目とは異なった印象に驚きました。細かい振り付けが多かったものの、それらが乱れることはなくキレのあるダンスで、グループの一体感を感じました。

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3曲目 『君と私の歌』“=LOVE

最後は王道アイドル系の明るく可愛らしい楽曲。メンバー全員が爽やかな笑顔を浮かべて踊っており、心からステージを楽しんでいることが伝わってきて、こちらも元気をもらえました。楽曲によって様々な表情を見ることができ、密度の濃い時間を過ごすことができました。

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“Prismile”

「王道カワイイ」を目指す“Prismile”はアイドルらしさ全開な正統派チームです! 新人戦には6期生のあいりょん・ちぃまる・はるはる・ももかの4人が出場。メンバーカラーに合わせた4色の衣装を身に纏い、歌と踊り、そして笑顔で観客を楽しませてくれました!

 

1曲目 『壁は続く』“ラストアイドル

パワフルで動きの多いダンスで、観客の心を掴みました。激しい動きの中でもチームの息はぴったり。今までたくさんの努力を重ねたことが伝わり、観ていて胸が熱くなります!

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f:id:waseda_Massken:20211027161124j:plain2曲目 『未来シルエット』“群青の世界”

1曲目とは打って変わりクールな曲で、本家を意識した滑らかで美しいダンスを披露しました。曲の雰囲気に合ったクールな表情で踊っており、「王道カワイイ」をコンセプトにしている“Prismile”のカッコいい一面を見ることができました!

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3曲目 『ドリームパレード』“iRis”

最後は王道のアイドルソング! 元気いっぱいでアイドルらしいダンスと、眩しい笑顔が魅力的。マイク片手に激しく踊る姿はまさに歌って踊れるアイドル。“Prismile”らしさが全面に出た1曲でした。

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“君はトキシック”

「失われた青春を取り戻す」をモットーに活動する“君はトキシック”は、常に熱い気持ちを忘れずに、パフォーマンスと向き合っています。情熱のこもった歌とダンスは、多くの観客を魅了し、まさに中毒にさせてしまいます。そんな中毒性アリのパフォーマンスは、今回も目が離せないものとなっています。

 

1曲目 『ブギウギLOVE』“カントリー・ガールズ” 

シックな音楽の中、色とりどりの衣装に身を包んだメンバーがステージを舞いました。どこか懐かしさを感じる曲調と声に合わせたリズミカルなダンスは、何度も観たくなるようなパフォーマンスでした。

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2曲目 『でんでんぱっしょん』“でんぱ組.inc

1曲目とはがらりと印象が変わり、2曲目はコミカルでポップな音楽に合わせた踊りを披露しました。リボンを振り回すパフォーマンスは、軽やかな印象を観客に与えました。

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3曲目 『秘密インシデント』“≠ME”

会場全体を縦横無尽に踊り回るメンバーたち。歌い手が交代していくシステムからは「メンバー全員が主役」という印象を受けました。可愛らしいダンスが息ぴったりで、最後のキメポーズも美しく揃っていました。

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UNIDOL2021 Fresh 入賞チーム発表

1日目入賞者

ベストドレッサー賞

K大学  “chocolat lumière

今回の大会に向けて作った、衣装への細部にわたるこだわりを述べました。これからもさらに進化させつつ頑張りたいという意気込みを見せていました。        

 〈第三位〉 

青山学院大学 “BLUE PRINCIPAL”

今まで優勝を目指して練習に励んできたという“BLUE PRINCIPAL”。大会に向けた練習の中では、本番を迎える中での葛藤があったといいます。これからもこのグループをもっともっと大きくするために頑張りたい、ということでした!多方面の方々に涙ながらに感謝を述べる様子は、今までの努力の積み重ねを感じさせました。

〈準優勝〉

K大学 “chocolat lumière

ダブル受賞となったK大学 “chocolat lumière”。

応援してくれたファンの方々、先輩方への感謝を述べました。4月に初めて会った時から、この大会での入賞を目指していました。このステージにあこがれていたということで、受賞への喜びを語っていました!

〈優勝〉

筑波大学  “Bombs!”

応援してくださった方々への感謝を述べていました。

7月からこの大会で優勝することだけを目標として練習してきたという“Bombs!”。去年参加できなかったメンバー、新しく参加したメンバー17人での舞台ということでした。努力が報われたことへの喜びと、今までの練習の積み重ねに思いを馳せていました。



2日目入賞者

ベストドレッサー賞

慶應義塾大学 “さよならモラトリアム”

クールな声と曲調にあったダンスで、観客を魅了した“さよならモラトリアム”。最後はハイペースな曲で、盛り上がりは最高潮に達していました。

ベストドレッサー賞〉に選ばれた瞬間は驚きのあまり言葉に詰まり、他のメンバーが代表メンバーをフォローするような微笑ましい場面も見られました。

 

〈第三位〉

上智大学 “SPH mellmuse”

パワフルな歌声と踊りで会場全体が華やいだ印象を受けました。チーム名がコールされると、皆いっせいに頭を下げてお辞儀をして、実行委員の方々や家族、友人に感謝の言葉を述べました。

 

〈準優勝〉

慶應義塾大学 “さよならモラトリアム”

ベストドレッサー賞〉と〈準優勝〉を勝ち取るというダブル受賞を達成。最後はこれまで支えてもらった人たちに、涙ぐんだ声で感謝の言葉を伝えました。

 

〈優勝〉

成城大学 “成城彼女”

大人数で、大迫力かつとてもクールなパフォーマンスで観客を魅了。

優勝発表直後のインタビューでは、コロナ禍で満足のいくような練習ができず、不安でいっぱいだったと練習期間中の胸の内を明かしました。それでも優勝を勝ち取ることができたこと、それを支えてくれた人たちに感謝の意を伝え、最後は「とても楽しかったです!ありがとうございました!」と結びました。




 

早稲田大学4チームからのコメント

ももキュン

・Freshに参加したメンバーの雰囲気

若さと可愛さが溢れていました!また、同期の人たちが多いので、みんな仲が良くてとても良い雰囲気でした。

 

先輩がいない大会を終えた感想

リーダーの大変さを思い知りました。先輩たちがいない分、自分たちの力やイメージを知ってもらう大会でもあり、より気合が入りました。先輩がいないとどうしたらいいか分からないところが多く、戸惑うこともありましたが、最終的には一人一人がFreshに向けて全力を尽くせたと思います。14期でFreshに出られたこと、とても嬉しく思います!ありがとうございました。

 

・早稲祭に向けての宣伝事項

ももキュン☆は11月6日に行われる3組合同アイドルコピーダンスサークルステージと11月7日の単独ステージに出演します。どちらのステージも可愛い曲からかっこいい曲まで踊りますので、ぜひ見に来てください。楽しんで頑張ります!



夏目坂46

・Freshに参加したメンバーの雰囲気

最初はみんなが同じ方向に向いて頑張れているのか不安だったし、お互い意見を言い合うことが少なかったです。しかし練習を重ねていくうちに、全員が「最高のパフォーマンスをしたい」という気持ちになり、練習でもお互いを指摘し、褒め合える関係になりました。本番も団結し、良い関係を築けたので、Freshに出て良かったと感じています。

 

先輩がいない大会を終えた感想

私たちはまだステージに度も立ったことがなくて、右も左も分からないままスタートしました。やることも多く、振り入れもできていない状況で本当にステージに立てるのか不安でしたが、先輩方や同期の子に沢山支えていただき、本番ではみんな楽しんでパフォーマンスをする事ができました!お客さんの前で踊る楽しさを感じ、これからもっとパワーアップしたステージをお見せしたいなと強く思いました!!

 

・早稲祭に向けての宣伝事項

11日・日に早稲田祭に出演させていただきます!Fresh人でしたが、早稲田祭20人でパフォーマンスします!オフライン、オンラインどちらもあります!最高に盛り上がれるセットリストになっていますので、ぜひご覧ください!!




Prismile

・Freshに参加したメンバーの雰囲気

和気あいあいとしていてお互いを尊重することができる、とても居心地のいい雰囲気でした。

 

先輩がいない大会を終えた感想

自分たちだけでセトリや構成を考え、様々な仕事をこなすことはとても大変でした。ですが、自分たちだけのステージを自分たちだけで造りあげるのはとても楽しく、ワクワクしました。結果は残念なものとなりましたが、同期だけで立ったステージは宝物になりました。このような状況の中大会を開催してくださってありがとうございました。



君はトキシック

・Freshに参加したメンバーの雰囲気

今回は3期全員でFreshに出場したのですが、とにかくとても仲が良いです!もちろん全員好きなアイドルも違うし、性格もできることも違うけれど、それぞれがお互いの良さを認め合ってお互いの苦手な所をカバーし合うことが出来たと思います。Freshの練習を始める前に「みんなが楽しめる大会にしよう」と決めたのですが、練習を始めてから当日までずっと楽しかったです。そんな仲の良さをパフォーマンスでも感じていただけていたら嬉しいです。

 

先輩がいない大会を終えた感想

コロナ禍でステージ経験が無いメンバーも多く、またダンス経験者もいないので正直とても大変でした。振り入れ、演出、衣装作り等沢山の初めてを多くのメンバーが経験したと思います。振り入れを先輩にお願いしたり、衣装を全部購入したりするなど難しいことを減らす道もありましたが、それでも全て自分たちの手で作り上げられたことに誇りを感じています。改めて3期全員で、3期だけで大会に挑戦できてとても良い経験になったし、3期だけで挑戦させてくださった先輩方にも感謝しています。

 

・早稲祭に向けての宣伝事項

早稲田祭も3期全員が出演します!Fresh大会よりもさらにパワーアップしているので、ぜひ私たちの成長を目に焼き付けに来て欲しいです!




冬予選大会開催予告

冬予選大会の開催が決定致しましたので、こちらに概要を記載させていただきます。

■開催概要
《公演名》UNIDOL 2021-22 Winter 関東予
《日程》2021年12月中旬
《会場》新宿ReNY
《住所》〒160-0023 東京都新宿区西新宿 6丁目5-1 アイランドホール 2F

 

 

 

今回のUNIDOL2021 Fresh ~Berry/Citrus~ は両日ともに各グループが、コロナ禍の鬱屈とした日々を吹き飛ばし、私たちの元気を取り戻してくれるような素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。今回、早稲田の4チーム含め入賞出来なかったグループは悔しい思いをしたことだろうと思う。けれども、その悔しさをバネにして次のUNIDOL本戦でどのような活躍を私たちに見せてくれるのか今から楽しみだ。

 

 

 

 

↓UNIDOLの過去記事はこちらから↓

 

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『運命の出会い』 作:ぺいぺい(ぶんげい分科会)

「ふぁ~、もう朝か」カーテンの隙間から部屋に入ってくる日差しを目にし、そう呟いた。昨日は金曜日で、学校がない土日を控えていたからゲームで徹夜をした。服装はもちろんジャージである。動きやすいし、着やすいジャージは俺のような引きこもりゲーマーには正装と言ってもいいかもしれない。

 ゲームも一段落ついたし、そろそろ寝ようかなぁと思い布団に入ろうとした瞬間、

「アキラ、起きなさい」と母親が大声で言いながら階段を上り、部屋に入ってきた。

俺の格好を見た母親は、一瞬ですべてを理解したようで、

「あんたまた徹夜したでしょ」と言ってきた。

「別にいいだろ。今日は学校もないんだし、好きなことに時間を使うのは自由だろ」

「はぁ~、まぁいくら言っても変わらないし、成績も一応、学年上位だしね。母さん、あんたがこんなにゲームばっかりしてるのに、成績いいのが不思議でたまらないわ」

 母親はため息をつきながら呆れた様子で言った。そう、俺は学年順位一桁台の学力を持っている。別に勉強が好きなわけではないが、大好きなゲームを好きなだけやっても成績さえよければ、両親に文句は言われないだろうとの考えのもと、勉強している。

「そんなことより、今日は家族でお出かけって言ったでしょ。早く着替えて準備しなさい」と母親は部屋に押しかけた目的を話した。

 あ、完全に忘れていた。めんどくさいが約束してしまったなら仕方ないかと思いながら目的地を母親に尋ねた。

「隣町のショッピングモールよ」と母親は答えると続けて、

「お父さんが車出してくれるから、とにかくあんたは早く着替えなさい」と言った。

「着替えるのめんどくさいからこのままでいいよ」

「いいわけないでしょ! 服装は現代人の鎧よ。あんたのその格好は歩兵以下。そんなんで外に行ったら即死よ」

 誰と戦うんだよと思ったが口には出さなかった。出したら戦争になり、目の前の強敵に殺されそうだし……。

 

 暑い……。今日の最高気温は35℃らしい。前日、徹夜した人間を強制的に連れ出すなんてどこの鬼だよ、と心の中で愚痴を言っていると

「早く歩きなさい。あんたの服を買いに来たのよ」と母親が言った。

「え、俺そんな事頼んでないし、第一、服なんかに興味ないし」と俺は反論した。すると

「アキラ、おしゃれすることは社会に出たら当たり前のことだ。高校生のうちに慣れておかないと、大学生になったら大変だぞ」と父親が言い、続けて

「父さんもなぁ、高校生のときにはおしゃれに興味がなかった。そのせいで大学生の時に苦労したもんだ。あの時は……」と自分の過去の体験記を話し始めた。いつものことだが、父親はことあるごとに自分の過去の体験記を語りたがる。

「……。つまりだ、社会に出るだけでなく、恋をしたりするとおしゃれにも興味を持つようになるのだから、今のうちに慣れておくことだな」とどこか自慢げに父親は語った。

 そして、俺はそのまま両親に連れまわされ、服屋を何軒も梯子させられた。さすがの両親も疲れてくると思っていたが、ぴんぴんしていた。それどころか、ようやくエンジンがかかってきたと言わんばかりに、店の中の商品を隅々までチェックしていた。その両親の拘束から逃れるため、俺は自動販売機に飲み物を買いに行くことにした。実際、晴天によるあまりの暑さにのども乾いていた。自動販売機の前で、どの飲み物にしようかと悩んでいると、

「あれ、斎藤君じゃない?」

 突然話しかけられた。振り返ってみると、そこにはクラスメイトの早見詩織さんがいた。

「あ、やっぱり斎藤君だ。どうしてこんなところにいるの?」

「いや~、両親に無理やり連れてこられて。少しでもおしゃれをしろって言われて……」

 俺はすこし緊張気味に答えた。

「やっぱり。斎藤君あんまりおしゃれとか興味なさそうだもんね。でも、おしゃれしないと女の子にモテないよ」

「いや、モテたいとかあんまり考えたことないし」

「そっか。でもせっかく来たんだからいいもの買って帰らないとね」と早見さんは笑顔で言った。

「じゃあ、私、両親待たせてるから、ここらへんで。また学校でね」

「また学校で」

 飲み物を買い、両親のもとへ向かう。その途中、俺はなぜか胸が熱くなっていた。普段は制服姿でしか会わない早見さんだが、今日は休日。早見さんは白のワンピースにヒールを履き、少しだが化粧もしていた。そんな早見さんに、俺は一目ぼれをしたのだろうか。この時の俺は、自分が抱いた感情も、この出会いの重要性もまだ知らなかった。