夢の世界がここにある。UNIDOL2020-21 Winter 関東予選【独自取材&レポート】
昨年冬大会以来の1年ぶりの大会。例年とは異なり観客は全員着席・声だし禁止であるものの、色とりどりのタオルやTシャツで、”推し”への熱い気持ちが感じられる。
テーマは、「夢の世界」。女の子たちの夢が詰まった舞台、人に夢を見せられる場所。憧れの舞台に飛び込んで、視聴者も夢の世界を体験してほしい——そんな想いが込められているそうだ。
今大会は、ダンス・表現力・個性・演出・魅了度における審査と、会場・オンライン双方の観客投票によって結果が決まる。上位4チームが決勝進出し、さらに5位のチームは「ワイルドカード」として決勝への切符に再度挑戦することができる。
関東予選には早稲田大学から、1日目に「夏目坂46」「Prismile」「ももキュン☆」、2日目に「君はトキシック」の4チームが出場した。1年間の原則オンライン授業という状況で、UNIDOLに出場するためにそれぞれの苦悩があったはずだ。マスコミ研究会は、UNIDOL実行委員会の協力の下、関東予選の取材に加え、早稲田4チームから予選直後のメッセージも頂くことができた。彼女たち自身が語る魅力や、今の意気込みをぜひご覧頂きたい。
本記事では早稲田チームを始め、UNIDOLの舞台で放たれる大学生の“輝き”を、2日間のレポートにてお届けする。
【一日目】
1.Capricco N大学
・今大会は初出場。
・予選は関東予選唯一、一人での出場。
・曲中に駆け抜ける振りからサビへと入る瞬間が印象的に映った。
・一人で踊ってるのに振りで体を大きく使えていて迫力がある。
欅坂46「誰がその鐘を鳴らすのか」
・ターンの瞬間に衣装の白いスカートが揺れる姿が綺麗だった。可愛さを押し出すのではなく表現力で魅せるダンス。
2.Tea♡Break お茶の水女子大学
・昨年の冬大会で初の決勝進出を果たす。
アンジュルム 「次々続々」
・最初のシンメのフォーメーションがしびれる。サビの振りが力強い。
AKB48 「Beginner」
・赤いスポットライトが似合う。Stand back togetherのピラミッドも美しい。力強いダンスとシンメトリーに並んだフォーメーションからダンスの正確性が際立った。
SKE48 「恋を語る詩人になれなくて」
・1,2曲目とは打って変わって一気に雰囲気が変わりかわいらしさと力強さを兼ね備えたダンスを披露した。
3.夏目坂46 早稲田大学
・初出場から1年半。
・昨年の結果を振り返って「Re:start」をテーマに掲げ出場。
欅坂46 「ハッピーオーラ」
・軽やかなダンスから可愛さが全面に溢れでるステージ。
欅坂46 「期待していない自分」
・キレのある振りからダンスの技術力で会場が魅了された。衣装にも工夫が施されており、手振りのダンスでは袖から延びるリボンが揺れてとても可愛らしい。
≠ME 「君と僕の歌」
今大会では他のグループでも使用された曲であったが、間奏で動画挿入をし一味違った演出であった。歌途中の動画挿入シーンも素敵な見せ方。「大きいステージに連れていく」という歌詞からは、決勝で再び新木場の舞台に立つ意気込みが強く感じられるものとなった。
4.kimowota☆7 法政大学
・本業はアイドルオタク。
BiSH 「GiANT KiLLERS」
・衣装のレースの色がメンバーによって違うのがかわいい、一人一人が輝いている。掛け声がすごい。
さきどり発信局 「さきどりーまー」
・全体的にアップテンポの曲で、一番にお客さんを巻き込もうとしている。
monogatari 「もう一回君に好きと言えない」
・サビの振りが大きい。このグループのオリジナルソングかと思ったくらい、すごく合っている。
虹のコンキスタドール「ずっとサマーで恋してる」
・ユニドルの大会ではなく、アイドルのコンサートみたいな感覚。
5.花色日和 青山学院大学
・2期生~4期生そろって出場。
≠ME 「君と僕の歌」
・ダンスの揃い具合が完璧!
・会場全体に響く曲と振りとの一体感でライブみたい。
AKB48 「Teacher Teacher」
・衣装チェンジでモノトーンの衣装に変わり、セクシーさと可愛さを兼ね備えたステージを見せた。
6.HONEY♡MILK 明治学院大学
BEYOOOOONDS 「都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて」
・全身白い衣装が素敵。パニエスカートが揺れる姿が可愛らしさを演出。
Luce Twinkle Wink☆ 「Symphony」
・腰を振るダンスでスカートが揺れるのがかわいい。
アキシブProject 「真夏のセレナーデ」
・観客席に手を振る場面が見え、予選ではなく一つのステージかのように錯覚した。
7.yume♡chu→ C大学
・2分弱のこの曲のパフォーマンスの中にストーリー性を感じられる構成。衣装、ダンス、照明、表情の全てによって曲の雰囲気が構成され、強い女性像を感じさせるパフォーマンス。置いていかれないよう必死に食らいついて見たパフォーマンス。
Life is やっぱ Beautiful! 「神宿」
・「盛り上がっていくよー!」イントロとほぼ同時に発せられる煽りの声で一気に一体感が生まれた。衣装替えで一気に空気感を変えてきた。
手羽先センセーション「未完成日記」
・そして再び衣装替え。みんなで同じ一つの目標に向かう必死さもがきらめきに昇華されるようなパフォーマンス。
8.成城彼女 成城大学
日向坂46 「青春の馬」
・人数多いのにまとまっている。キレイなかわいさ、元気もある。ダンスに緩急がついていて気持ちいい。
アンジュルム 「Uraha=Lover」
・最初の全員横一列で歌う場面は圧巻。ポイントポイントを合わせてくる、テンポ感のよいダンスで会場全体に一体感を生んだ。
≠ME 「君と僕の歌」
・振りが本当に揃っており、時折白いスカートが揺れ、非常に綺麗。
9.≠嘘つきエモーション 学習院大学
愛乙女☆DOLL 「蒼い空を望むなら」
・アイドル界のマイノリティという紹介にもあるように全3曲を通してメイド服に身を包み、目立ったステージを魅せた。
天晴れ!原宿 「アッパライナ」
・色とりどりのライトに照らされ迫力のあるダンスを披露。
アイドルカレッジ 「Wonderful Story」
・メンバーが観客席に目線を合わせ、思いを伝えたいという強い気持ちが表れたステージで幕を閉じた。
10.Prismile 早稲田大学
東京CuteCute 「未完成の少女」
・衣装キラキラ。チームのイメージが伝わる。ふわふわとしたかわいだが、振りにキレがあって見ていて楽しい。
22/7「空のエメラルド」
・表現力の試されるダンスを踊りきっている。ダンスの表現からは、はかなさ、青春が感じられる。
≠ME 「君と僕の歌」
・2曲目→3曲目で、みんなでUNIDOL大会に立ち向かっていくんだという団結感が伝わってくる。見ているこちらも元気になれるパフォーマンス。
11.青春は短し 踊れよ乙女 大妻女子大学
つばきファクトリー 「意識高い乙女のジレンマ」
・テンポ遅めの曲始まり、聞かせる曲を入れてきた! 後ろのMVがきちんとストーリー仕立てになっていて完成度が高い。
日向坂46 「My fans」
・最初の踊りと照明が相まって、一気に見ている人を曲に連れ込む。
Luce Twinkle Wink☆ 「Luce Luce Twinkle Wink☆」
・人数が少ないと振りズレが目立ちやすいにもかかわらず、振りがすごく揃っている。
12.ももキュン☆ 早稲田大学
SUPER☆GIRLS 「華麗なるV!CTORY」
・人数の多さを最大限に武器にしたフォーメーションダンス。1、2、4年生が混ざってこの一体感。お客さんが見えるステージングが圧巻。
モーニング娘。’18 「Are you Happy?」
・曲のつなぎ方が自然かつかっこいい、しびれる。照明がダンスとあっていてかっこいい、一秒も目が離せない。曲中の胸打ちダンスがかっこいい。
私立恵比寿中学 「ハイタテキ!」
・曲はじめ、中央から放射状に散らばっていくのがキレイ。
・曲繋ぎが天才的に自然。2分割したステージングで、飽きが来ない。ステージの広さを最大限に使い切っていて、こちらが元気になるパフォーマンス。
13.愛センチメートル 江戸川大学
・衣装のインパクトが強い。ステージを広く使い、お客さんを巻き込む元気さがいい。
℃-ute 「夢幻クライマックス」
・衣装変えで一気に雰囲気を変えていく。ゴスロリのような黒衣装がかわいい、曲と合っている。
手羽先センセーション 「I’m Believer」
・今年結成されたばかりのチームと思えない一体感。チームのひとりひとりが感じている仲間の大切さがひしひしと伝わってくるような感覚。
特別コメント
今回、予選1日目に出場した早稲田大学の3チーム(「夏目坂46」「Prismile」「ももキュン☆」)より特別にコメントをいただいた。従来とは形式も戦い方も全く異なるものとなった今回のWinter予選。1年ぶりのUNIDOL大会、それぞれが抱えた想いとは。
夏目坂46
——特色やアピール
私たちは夏目「坂46」ということもあって坂道グループさん(乃木坂46、櫻坂46、日向坂46)の清楚感だったりイメージをパフォーマンス、曲選、衣装などにおいて大切にしています。
また、2019年4月に結成された新規チームで、メンバーは1・2年生のみで構成されています。
UNIDOLの大会の他には、イベントや学園祭を中心に活動しているチームです。
——予選を終えて
私たちは、昨年の初出場の夏大会では、予選2位、決勝進出という結果を残すことが出来ました。しかしながら決勝では全く爪痕を残すことができず、メンバーもバラバラの気持ちになり、悔しい思いをしてきました。それを超えて、やっとの今大会、冬予選だったので、絶対に1位通過、という思いだったのですが決勝進出もままならずまた悔しい思いをしました。ただ、パフォーマンスを褒めて下さる方が何人もいらっしゃったのは、本当に嬉しかったですし、自信に繋がりました。
——敗者復活戦への意気込み
敗者復活戦で本戦勝ち上がり、本戦入賞を目指したいです。今予選で、本気で取り組んだ結果だからこそ、ユニドルで何が求められているのかよく分かった予選でした。だからこそ、そこを克服したパフォーマンスを敗者復活戦でお見せしたいです。
Prismile
——自分たちのチームの特色やアピールポイント
私たちは"王道かわいい"をコンセプトにしたチームです!普段は48グループを中心に踊っていますが、大会では王道かわいいに加えて表現力や世界観を大切にしており、様々なアイドルさんの曲を踊っています。アイドル像の統一やテーマについて深く考えたセトリの一貫性がアピールポイントです!
——予選を終えて
結果は悔しいものとなってしまいましたが、この8人でしかできない爽やかさの中に力強さも感じるようなパフォーマンスができたのではないかと思います。結果を真摯に受け止めてこの悔しさをバネに次に繋げていきたいです。
——敗者復活戦・今後の活動への意気込み
コロナ禍という状況下、オンライン配信では今までのパフォーマンスを継承するだけでは真っ向から戦えないこと、戦い方を改める必要性を強く感じました。
敗者復活戦・決勝を経て、今回の敗北があって成長できたと言えるようにメンバー全員が気持ちをひとつに突き進んでいきます。
今後はPrismileが大事にしてきた王道カワイイというアイドル像をよりいっそう進化させて皆さんにお届けしたいです。
ももキュン☆
——自分たちのチームの特色やアピールポイント
私たちは、全員で全力全開のフルパワーのパフォーマンスをお届けしています!ダンスでは振りを揃えるだけでなく、魅せ方を考え、一人一人の個性を活かして「ももキュン☆らしさ」を追求し続けています。フォーメーションでは、メンバー全員が端から端までお客さんに楽しんでいただけるような構成を意識しています。また、歌詞に込められた思いをみんなで解釈し、大切な一曲一曲の伝え方も工夫しています!
——予選を終えて
一位通過ができて本当に嬉しいです。一人一人の努力が今回の結果に繋がったと思います。なによりも、全員で予選のステージを心の底から楽しめたことが本当によかったです!そして、応援してくださった皆さん、支えてくれたももキュン☆メンバー、家族や友人、関わって下さった全ての方に感謝申し上げます。ありがとうございました!
——今後の活動への意気込み
私たちが目指すのは全国優勝です。今回の予選一位通過がメンバーにとって大きな自信に繋がりました。その自信を決勝までたやさずに、私たちらしく全力全開で、そしてみんなで楽しんでパフォーマンスしたいと思います!気を引き締め直し、またここから全員で全国優勝を狙って頑張ります!応援よろしくお願いします!
【二日目】
1.Open Heart 聖心女子大学
NGT48 「絶望の後で」
・夏大会中止の悔しさを噛み締めたOP映像後にふさわしい希望に満ちたイントロ。力強いダンスが元気をくれる。
日向坂46 「アザトカワイイ」
・一曲目のクールな雰囲気から一変、カワイイが止まらない。「最高の日にしましょう!」の煽りが坂道グループの上品さまで完コピ。
乃木坂46 「帰り道は遠回りをしたくなる」
・万華鏡を見ているような美しいフォーメーションに引き込まれる。「好きだったこの場所」に、彼女たちが戻ってきてくれた舞台を重ねて胸が熱くなる。
2.UNGRID 慶應大学
AKB48 「Generation Change」
・1人1人のダンスの迫力が凄まじく、揃った振りの中にも「個」を感じられる。背景に流れる「UNGRIDの逆襲」なる文字が、その迫力を後押しする。
つばきファクトリー 「ハッピークラッカー」
・お客さんの盛り上がりが桁違い。コール禁止の状況の中で客席を巻き込む大きな力が、この時代への希望すら持たせてくれる。
NGT48 「世界の人へ」
・ダンスの完成度に圧倒される。ジャンプの静止時間までもが一つ。プロフェッショナルなパフォーマンス直後、去り際の「ありがとうございます‼」の無邪気さとのギャップに目を見張った。
3.君はトキシック 早稲田大学
≠ME 「P.I.C」
・登場した瞬間から、衣装の素敵さが際立つ。運動量どうなってるん? 瞬間移動しているのか? と考える間もない。3人がプログラミングされているかのような一体感が目まぐるしい。表現力が一人の人間を超えているとしか思えない。これが「アイドル」か——と、その一言に集約されてしまう。
ラストアイドル 「愛を知る」
・1曲目に続き激しく踊りながら絞り出す「最後まで楽しんでいきましょう!いくぞ!愛を知る~!」、観客もそれに応じるようにペンライトが踊る。3人という、他グループに比べると少人数な彼女たちながら、1人1人を一瞬も見逃せなくて、目が足りない。
・バラード曲でも、彼女のたちのパワーはこんな風に昇華されるのか、と息をのんだ。髪を振り乱し、がむしゃらに踊る彼女たちを見ていると、この世に怖いものなんてないような万能感が満ちてくる。そして叫ばれる「奇跡を起こすよ」、確信に変わる。手書きの歌詞と私服のダンスPVは、とても強く見える彼女たちに、少しの親近感を感じさせてくれる。マイクを通さず自らの声で伝える、「ありがとうございました」。舞台を去るギリギリまで感謝を伝えながら帰っていく3人。夢の世界とこちら側を繋げてくれた、などと感じて良いのだろうか?
4.Like 桜美林大学
でんば組.inc 「ギラメタスでんぱすたーず」
・マルチカメラで追う、1人1人の表情まで完璧な再現度。正解なんて無いようなでんぱ組の「自由度」をコピーしようと決め、かつ素晴らしい完成度のパフォーマンスを見せつけたその勇気と根気、能力は天晴れとしか言いようがない。
EMPiRE 「SUCCESS STORY」
・でんぱ組の衣装まま始まった時は驚いたが、あっけなく余計な心配に終わった。彼女たちの大きな魅力は表情だと言いたい。表情だけでも全てを塗り替えられると示した。
天晴れ!原宿 「決勝戦はエブリデー」
・天晴れの楽曲と言えば、コールによってボルテージが倍増する印象があるが、声に出せなくとも観客の盛り上がりが画面越しに伝わってくる。観客を巻き込むステージングに、会場で見ていた方々は声をぐっとこらえる大変さがあったとさえ思われる。舞台上も観客も、もちろん画面の前の我々も全員が間違いなく楽しんでいた。
5.成徳ロマンス 東京成徳大学
超ときめき♡宣伝部 「わたし、ナンバーワンガール!」
・黒い衣装とキュートな笑顔が、小悪魔ちっくで、簡単に虜になってしまった。観客に振りまかれる眼差しも計算し尽くされているよう。全員「今自分と目が合ってたよな?」と帰り道にどぎまぎしていることだろう。
=LOVE 「手遅れcaution」
・1曲目で我々の心をいとも簡単に掌握した小悪魔が、繊細に悩み、縋る少女に一変。このセットリストはズルい。良い意味で。
私立恵比寿中学 「響」
・相変わらずセットリストが完璧で、7分半という短時間で彼女たちの多面性をこれでもかと見せつけられて感動した。異なるダンスや表情だが、瞳の奥に常に「ギラギラさ」が見えた。色の違いを表現できるのは、確かな芯を持つ自信あってこそなのだろう。
6. na-nam M大学
NMB48 「オーマイガー!」
・「みなさんのところに、虹をかけに来ました!」、あまりにも煽りが馴染んでいるものだから、本職アイドルでないということに納得が出来ない。
・ダンスのキレ、煽り、笑顔。何から何まで「プロ」の総合力。
モーニング娘。 「Fantasyが始まる」
・あまりに全てのレベルが高いものだから綴るのが困難だが、ダンスの上手さに特別圧倒された。
ベイビーレイズJAPAN 「僕らはここにいる」
・「僕たちは、na-namは、絶対に、決勝に行きます!」「今日までに何度も何度も挫けそうになったけど、僕たちはここにいます。皆で一緒に、最高の景色を見に行きましょう」言葉の一つ一つが真摯で刺さる。“コピー”ダンスの大会だが、彼女たちが持つ個性や強い気持ちが既存の楽曲と共鳴して、UNIDOLの舞台でしか生まれない新しい夢の世界が広がっていた。
7.さよならモラトリアム 慶応義塾大学
欅坂46 「誰がその鐘を鳴らすのか?」
・人数を活かした振付を、7人でここまで魅せられるのか。振り割りの工夫や練習量、客観視する能力の高さが圧巻。
アンジュルム 「出過ぎた杭は打たれない」
・舞台上でのメンバー同士の連携の強さが際立ったパフォーマンス。
SKE48 「未来とは?」
・さすが前大会準優勝チーム、完成度がすごい。挙動が全てアイドルで、1つのチームだと感じる。異なるユニットのコピーを見られるのが贅沢だ。
8.mint☆ 芝浦工業大学
Maison book girl 「faithlessness」
・アイドルとしては珍しいアバンギャルドな世界観を巧みに表現していた。コンテンポラリーダンスをさらっと踊りこなす、彼女たちのポテンシャルに圧倒された。
私立恵比寿中学 「ハイタテキ!」→「未確認中学生」
・指揮のふりから次の曲へと移行するステージ構成に工夫が見られた。1曲目とは打って変わっての激しいパフォーマンスのギャップに心奪われる。
BiSH 「My distinction」
・ダンスだけではなく、表情一つ一つに表現への思いが伝わってくる。最後に全員そろって深々とお辞儀をする姿が印象的だった。
9.BLUE PRINCIPAL 青山学院大学
SKE48 「前のめり」
・綺麗なフォーメーション、揃ったダンス、完成度がプロのそれではないかと思わされる。水色と白色の爽やかな衣装にときめきがとまらない。
26時のマスカレイド 「B dash!」
・9人それぞれの個性が光っていて、目が足りない。
乃木坂46 「Sing Out!」
・ミニスカートからロングスカートへの衣装チェンジ。1つの舞台で様々な面を見せてくれる彼女たちの姿をもっと見たいと思わされた。
10.柊坂 J大学
乃木坂46 「ガールズルール」
・広いステージをたった2人で縦横無尽に駆け回り、客席を盛り上げる実力は圧巻。
NMB48 「だってだってだって」
・お互いサポートしあっている様子に2人の仲の良さが感じられる。
≠ME 「君の音だったんだ」
・切ない表情からはじける笑顔まで表現の振り幅が凄い。
11.和娘。《なごむすめ》 和洋女子大学
私立恵比寿中学 「紅の詩」
・青いギンガムチェックのスカートの裾が揺れる、緩急ついたダンスに目が釘付けになった。かっこいい曲を可憐に踊りこなすのは彼女たちの持てる技では。
FES☆TIVE 「ドンドコ祭りズム -燃え上がれタイコちゃん-」
・早いテンポのダンスもキレキレ。電波曲のパフォーマンスからもその実力が伺える。
アキシブproject 「アキシブウェイ」
・3曲目ながらも、掛け声を入れながらの全力のダンスは圧巻。運動量の激しいステージにも関わらず、細部までこだわっており胸を打たれた。
12.ー麗ー 國學院大學
The Idol Formerly Known AS LADYBABY 「参拝!御朱印girl☆」
・イントロのみ、扇子で顔を隠して登場。白いチュールの衣装で可憐に踊る姿は天女、あるいは天使を彷彿させる。
AKB48 「アボガトじゃね~し...」
・あの指原莉乃さんも48グループで一番難しいと評するダンスを元気いっぱい笑顔で踊りこなす。その裏にあったであろう努力に思いを馳せてしまった。
アンジュルム 「七転び八起き」
・可愛らしい曲から一転、かっこいい曲へ。確かに同じメンバーなのにまるで別人のようにまで感じられた。
The Idol Formerly Known AS LADYBABY 「参拝!御朱印girl☆」
・冒頭にイントロのみ流した曲で締め。「ぴょんぴょんぴょん」というコールも交えながら最後は客席まで巻き込み、全てにおいて魅了されるステージだった。
13.SPH mellmuse 上智大学
Cheeky Parade 「BUNBUN NINE9’」
・まずなにより惹かれるのは笑顔。激しいダンスとフォーメーション移動を平然とこなす彼女たちのバイタリティーはいかほどか。
Luce Twinkle Wink☆ 「Treasure」
・メンバーを交代して次は白いワンピースを着た5人が登場。
・赤いタイトなミニのスカートで6人が登場。
・女の子らしいポップさから一転、かっこいいギャップで魅せる。
HKT48 「大人列車」
・総勢16人の圧巻のステージ、人数を活かし本家HKT48にも負けない華やかさに画面越しに夢中になった。
14.monagirls S大学
≠ME 「≠ME」
・メンバーごとに違う色のリボン巻いたワンピースで登場。キレがありながら可憐さがやどるダンスが甘酸っぱい曲にぴったりでこれぞ王道アイドル。
タマリデパート 「ゴイリョクタラズ」
・曲冒頭に見上げた顔に浮かぶ切ない表情に胸が打ちぬかれた。一人ひとりの解釈が読み取れる指先まで心のこもった表現にコピーダンスのもつ可能性を見せつけられた気がした。
HKT48 「最高かよ」
・関東予選を締めくくるのにふさわしい盛り上がり。生声のコールやファンサも盛大に交えて観客の心を鷲掴みにした彼女たちこそ最高かよだった。
特別コメント
君はトキシック
3位を勝ち取った、早稲田大学『君はトキシック』リーダーのれいかは涙を堪えながらこう語った。
「3人という少ない人数でも、がんばってきてよかった」
パフォーマンスに現れる以上の、彼女たちしか知らない苦労や心細さを慮ると、言葉にならない。
MCの静氏に「最近のユニドルに出る子たちは、喋りが上手な子が多いね」と言われるほどまとまった話し方。あんなに情熱的なパフォーマンスを見せられたあとに、この落ち着いた表情と聡明さを見せつけられると、内に燃える情熱を感じてぐっとくる。
そんな君トキに、改めて自身の色や決勝への想いを届けてもらった。
——「君はトキシック」の特色やアピールポイント
3人での出場であったため、人数の少なさを感じさせない迫力のあるステージをお届けするために、激しいフォーメーション移動や、あえて本家が大人数グループである楽曲をセトリに組み込むこと、背景映像で人を多く映すことで、3人よりも多くいるかのように見せるなど、数々の工夫を凝らしました。また衣装に関しては、衣装替えに挑戦し、1着目は本家の衣装を再現し、2着目は曲調と歌詞の意味からデザインを考えました。
——予選を終えて
3人で挑む舞台は一人一人の負担も大きく、本当に大変なことが多くありましたが、このような素晴らしい結果を頂くことができて、我々含め、チームの仲間や応援してくださる方々が皆喜んでくださって、本当に嬉しく思います。たとえ少人数でも決勝進出は不可能ではない、ということを証明することができました。ここまで応援してくださった皆様、そして支えてくださった多くの方々に改めて感謝申し上げます。
——今後の活動への意気込み
新チームとして初のユニドルで結果を残すことができて、少しでも私たち「君はトキシック」の名前を知っていただけて嬉しいです。今後も、結果を残すことはもちろんですが、チームメイト全員が協力しあって互いに支え合いながら、チームの更なる発展を目指して試行錯誤し、「君はトキシック」の名前をたくさんの人に知ってもらい、そしてまたたくさんの方々に愛されるようなチームにしていきたいです。
人数のディスアドバンテージを乗り越え、見事予選を通過した君トキ。何より、応援している人たちの存在に感謝し続ける謙虚な姿勢に、ファンも決勝に向けて一層気が引き締まるのではないか。3人がどんな風に更なる進化を遂げて舞台に上がるのか、目が離せない。
想いの詰まった夢のステージ
UNIDOL2020-21 Winter関東予選は、1年ぶりの公式大会ということもあり例年以上に白熱した大会となった。それぞれがチームの色を考え、見つめなおした長い長い準備期間を経て、彼女たちが見せたパフォーマンスには、確かに胸を打つ何かが秘められていた。
三題噺から短編小説②
※三題噺では、指定された三つの言葉を使って作文を書きます。今回のお題は「ドライバー」「病院」「遠吠え」でした。
タイトル:タクシードライバー科
泥酔した人間をタクシーに乗せて、お役御免だと思っている連中があまりに多い。
同僚や友人が潰れたらとりあえずタクシーに乗せる。それが優しさだと思っているなら、誤解だ。泥酔した客は大抵ポケットから財布を出すこともできない。おまけに要らない「落とし物」を車内に残して行ったりする。「落とし物」の強烈な臭いと共に車を走らせるこっちの身にもなってほしい。下手に声を掛けると「うるせえ!こっちはお客様だぞ」と振りかざす。暴行を受けることもザラにある。タクシー業界は非常にストレスの多い職場だ。本当ならすぐにでも辞めてやりたかった。だが、そんなストレスとももうお別れだ。
そんなタクシー業界の現状を打破するため、社で新たな福利厚生が導入された。月に一度、都内の特定職業病院にある「タクシードライバー科」で無償の受診が認められたのである。個人主義、多様化の時代。年齢、性別、職業、趣向。あらゆる個性に対応するため近頃は職業に応じて専門医が置かれるようになっている。噂では「パティシエ科」「女性アイドル科」なんてものもあるらしい。
話を戻そう。
俺が初めて特定職業病院の「タクシードライバー科」へ訪れたのは先月のことだった。「タクシードライバー科」は病院の5階にある。最後の客の「落とし物」を片付けたあとだったから、深夜1時くらい。この時間でも開いている外来は「タクシードライバー科」「ホスト科」その他いくつか。5階だけ煌々と電気がついているのも不気味だ。夜の病院なんぞ好んで来るものではない。病棟内は消毒剤の臭いが立ち込めていて、不気味な重低音も聞こえている。遠くで聞こえるナースコールは患者の急変の知らせか。50にもなって冷や汗をかくとはお恥ずかしい。
診察室に入ると、温厚そうな初老の医師が待っていた。
「今日はどうしましたか」
「それは大変ですね。酔っ払いには絡まれますか?」
「ええ。実は今夜も」
「それはいけませんね。一日にどれくらい絡まれますか」
「日に4度ほど」
「ちょっと頻度が多いですね」
医師は回転椅子でデスクに向き合うとカルテに「泥酔被害」と記入した。少し思案顔をしたあと、腕を組んで俺を見る。
「無銭乗車とか、暴力もありますか」
「たまにですが……」
「やっぱり重症ですね。今日は何点か薬処方しますね」
「お願いします」
なんだ。「タクシードライバー科」というから、もっと専門的な質問をされるのかと思ったら普通の医院となんら変わりないじゃないか。急に力が抜けてくる。
「今日処方する薬は……。まず睡眠薬ね。14錠です。夜寝る前に水で飲んでください。あとこれ[嘔吐抑制剤]です。注射針で30本。吐きそうなお客さんの頸動脈に打ってください。それと[鎮静剤]ね。これも注射針ね。苛立ってるお客さんの左腕に打ってください。数時間気絶するかもしれないけど気にしないでね」
なるほど、ドライバーだけでなく客用の薬も処方してくれるのか。タクシードライバーの健康のカギは客が握っているようなものだからな。医師はデスクの引き出しをゴソゴソと漁りパンフレットのようなものを取り出した。
「これね。新しく始まったサービスで、皆さんに渡しているんです。無銭乗車とかどうにもできないような迷惑な客がいるでしょう。この地図にあるキャンプ場で降ろして下さい。置き去りで構いませんよ。しかるべき機関が適切に対処しますから」
パンフレットはイラスト入りで分かりやすい。タクシードライバーの福利厚生も捨てたものではないなと思う。その時、ずっと聞こえていたサイレンのような重低音が急に大きくなった。診察室の天井に振動が伝わる。けたたましい音だ。悲痛な音だ。
「何の音ですか」
思わず聞いた俺に、医師は驚いたような顔をする。
「ご存知ないんですか?ドライバー科の行動療法ですよ。今はタクシードライバーさんが何人か屋上でやってますよ。日頃抱えている恨みや鬱憤を発声で晴らしているんです。深夜に叫び声が聞こえることがあるでしょう。あれは大体この叫び声です。どうです、あなたもやっていきますか?」
なるほど、さっきから聞こえていたのはドライバーたちの遠吠えか。仲間の叫びなら何も怖いことはない。ここは明日からも仕事に邁進するための補給地点。もう迷惑な客に足蹴にされる俺ではない。ひと叫びして行くか。診察室の切れかけた蛍光灯がチカチカと点滅する。深夜に浮かぶ紙のような月が、俺のドライバー人生を祝福しているようだった。
※この小説はフィクションです。実在の人物や機関とは全く関係ありません。
三題噺から短編小説①
※三題噺では、指定された三つの言葉を使って作文を書きます。今回のお題は「ドライバー」「病院」「遠吠え」でした。
タイトル:医者と患者
医者は難儀していた。
彼の腕には一切の問題もなく、地位も収入にも問題はない。診ている患者も皆快方に向かっている。彼の目の前にいる患者も、一週間もあれば元どおりになるだろう。しかしこの患者がこの病院にいること自体が彼にとっては問題だった。患者に因縁があるわけでもないのだが、その患者は問題だった。
今日もその患者がやってきて、礼儀正しく診察室の椅子に腰を下ろした。
「先生、今日もよろしくお願いします。」
患者の眼が光る。患者のこういうところを医者は苦手としていた。
「それで、今日の調子はいかがですか?」
「体にガタがきてましてね。腰なんか一日中ギシギシ鳴ってますよ。」
「そうですか。やはり手術が必要なようですね。」
内心、医者はそれを手術などと呼びたくはなかった。しかし医者としての倫理観と場の空気がそうはさせてくれなかった。冷たく硬い印象の外見に反して患者はとてもフレンドリー。だが、そのことがますます医者の悩みを加速させていく。どう考えてもこの患者はこんなところに来るべきではない。しかしそのことをどう伝えればいいのか。そもそも伝えるべきなのだろうか。どうにも表情を読めない患者の顔がさらに心を惑わせる。だがもう医者の心は決まった。やはり伝えるべきだ。真実を伝えてこそだ。
「君、ロボットだよね?」
「え?」
「いやどう見てもそうでしょう。金属の外装にカメラアイ、おまけに充電用ポートまで。行くべきはたぶん病院じゃない。」
「面白い冗談ですね。手術を前に笑わせて和ませてくれるなんてやっぱり先生はいい人だ。私の善意センサーもあなたの善意を検知して犬がはしゃぐみたいに尻尾を振ってますよ。」
医者は驚いた。たぶん彼に何を言ってもよくて負け犬の遠吠え、悪ければやぶ蛇にしかならないだろう。看護婦にドライバーを持ってくるよう頼んでオペ室へ入っていった。
書評『はぐちさん』 ~等身大のままのあなたがいい~
「はぐちさんって誰?」
「生き物なの?」
始めはきっと誰もがそう思う。くらっぺ先生の『はぐちさん』はSNS発で単行本に至った4コママンガだ。優しい線描で、「はぐちさん」と主人公「八千代」の日常が描かれている。
八千代は仕事に忙殺される日々で身を擦り減らしていた。そんなある日、「世界中を旅したけれどここがいいです」と不思議な生き物がやって来る。お餅のような、風船のようにも見えるその生き物は「無理をすれば」何にでも変身できる。ハンサムな男の子にも、ベッドや傘にでも。そしてとびきり料理が上手。それが「はぐちさん」だ。
春夏秋冬、はぐちさんの美味しいご飯とともに何でもない日常がある。休日がとびきり幸せで、出前のメニューにわくわくして、仕事に行くのが憂鬱で、それでもはぐちさんが待っているから頑張れる。八千代と共にいつしか読者の心も洗われる。
はぐちさんはいつも一生懸命。長老のようなことを言うのにあどけなさがあって、優しい。ああ、必要なのは毎日「待っていてくれる」存在で、頑張らない自分を受け入れてくれる場所なんだ。そんなことに気付かされる。
なんでもないことなのに、ちょっぴり涙が出そうになる。
私が『はぐちさん』に出会ったのは池袋のジュンク堂。当時受験生だった私は荒みきっていた。まだ自習室に行きたくないなあ。欲しい本があるわけでもなくふらりと入って黙ってエスカレーターに運ばれる。
結果だけが評価される受験自体、私には不向きだった。やりたいことをやるため、やりたいことを犠牲にする。そんな矛盾にうんざりしていたのだ。『はぐちさん』を見つけた瞬間はよくおぼえていない。気づけば、4巻まで買っていた。大判のコミックだから一冊900円もする。当時は特にお金の使い道も無かった。しんどくなったらジュンク堂に行って一冊また一冊と手を伸ばした。あの受験勉強を支えてくれたのは、きっと『はぐちさん』だ。青本でも、単語集でもなくて。
はぐちさんは無理をすれば何にでもなれる。
でも、皆はぐちさんに無理をさせない。だからいつでもお餅の姿のまま。
そう、無理なんてしなくていい。
私たちは気づけば無理ばかりしている。無理をしなければ叶えられない夢も地位もある。でも、何気ない日々の小さなときめきを忘れてしまうのは悲しいことだと思う。無理をしない自分を認めてくれる存在をいつだって探している。
等身大で何の変哲もない自分を受け入れてほしい、とただ願っている。
今でも辛くなったらはぐちさんを読む。レポートに忙殺される日々も、プレゼンがうまく行かなかった日も、心無い言葉に傷ついた日も。
「無理をしない」私を『はぐちさん』は受け入れてくれる。気づけば無防備になっていて、身体の中心がぽっと温かくなる。
心が折れそうになっている人、寂しい思いをしている人が『はぐちさん』に出会えますように。
『はぐちさん』はくらっぺ先生のTwitterからも楽しめます。
興行収入124億『美女と野獣』の予告編の作り手による制作秘話
「ガル・エンタープライズ」演出部ディレクター浅木裕佳子さんにお聞きしました。
――当時のエピソードを伺ってもよろしいですか?
『シンデレラ』(2015)からの流れで『美女と野獣』(2017)の予告篇も担当させてもらえることになり、すごく嬉しかったのですが……最初の打ち合わせで「国内の最終興行収入100億を目指します!」と、とんでもない目標を聞くことに。
目標設定で滅多に聞く数字ではないので何度か聞き直しました(笑)。
――100億円ですか!?
数字だけだとピンとこないかもしれませんが、当時国内で100億を超えた作品は歴代で30作ないくらいでした。
ちなみに『シンデレラ』は最終で52億、通常は20億いけばヒットと言われる感じです。
これはただ事ではない、と改めて気合いが入ったことを覚えています。
――予告編で特に気に入っている点はありますか?
この作品は本編素材がもらえず、アメリカで作られたオリジナル予告素材をもとに日本用に組み直しました。
本国と何度もやりとりしながら進めるので、カットの並びや使う尺が思うようにいかないことが多く、妥協が必要なことも多くて。それでも限られた素材の中で、いかに重要なカットを印象的に見せられるかという点は絶対に諦めないようにしました。
そのなかで、日本版予告のメインタイトル前の流れは特に気に入っています。
オリジナル予告は割とテンポ感重視でアクションっぽい流れだったのですが、日本版ではベルのセリフと『美女と野獣』らしいカットでエモ感を出しつつ、しっかりと引きを作れたかなと。
――これだけ成功した理由はどこにあるとお考えですか?
100億という数字は決して狙って出せる数字ではなく、基本的に私たちができる仕事は最初の着火まで。映画公開後はひたすら祈って見守る感じです。
大ヒット御礼のTVCMで盛り上がりを後押ししたりもしましたが、一番大きかったのは、お客さんが求めていたものと作品の持っていた力が合致したからこそだと思います。
この作品はもともとのアニメーション版のファンも多く、プリンセスシリーズの実写化ということで期待値も高かったので、プレッシャーが半端なかったです。
その期待値を下げず、どうしたらもっと上げられるかということに注力しました。
アニメーション版は25年前(公開当時時点)から、長く愛されてきた作品なのでその分ターゲット層も広がります。
実写版シンデレラからの流れは大事にしつつも、さらに間口を広げる必要がありました。
- 王道の楽曲や有名なシーンを丁寧に見せて、往来のファンへの安心感と「待ってました!」の気持ちを盛り上げる
- 実写だからこその映像美で期待感を煽る
- プリンセスファンには、エマちゃんの可愛さとダンスシーンの素敵さを強調
- 親子には、あのキャラクターもちゃんと出ていて可愛い、と伝える
- デートムービーにもなって欲しかったので、「男の人もガストンがいるから楽しめるよ!」と伝える
など……映像としてはできる限りの角度で攻めました。
※YouTubeコメントについて
「思い当たるシーンが多くて感動」「画がゴージャス」「エマ・ワトソン綺麗すぎ」など、実際にさまざまな角度からの「見たい」を感じます!
――予告編以外の部分にも成功の秘訣はあったのでしょうか?
映像宣材の他にもあらゆるプロモーションをディズニーさんが仕掛けていて、『美女と野獣』のお祭り感を世の中に広げていました。
――確かに公開当時、とても話題になっていましたよね。
渋谷の駅前で冬の時期にイルミネーションでライトアップして、美女と野獣の二人が立っているようにしたりして。
「世の中が美女と野獣一色になっているな」といった感じで、今『美女と野獣』が流行っているのだな、といった空気を作り出していました。
――実際、企画員も全員見てました。
※混んでいてやむを得ず一列目で見て、首が痛くなった思い出を持つ企画員も……。そんなこと関係ないくらい、映画はおもしろかったです。
映画を観てさえもらえればクオリティには喜んでもらえると信じていました。
そのため、無事に多くの方に届いてくれたことがとても嬉しかったのと同時に、安心したという気持ちが大きかったのを覚えています。
最終的に国内興行収入124億と沢山の方に観に来てもらえて、予告篇を作ってきたなかでも特別な思い出深い作品となりました。
——ありがとうございました‼
〇浅木裕佳子さん
1976年設立、業界初の映画予告篇制作会社「ガル・エンタープライズ」演出部ディレクター。『美女と野獣』『アベンジャーズ/エンドゲーム』『映画クレヨンしんちゃん』など幅広い作品の予告篇を制作。2020年8月時点の最新作は『ブラック・ウィドウ』『架空OL日記』。
ゲームファンとお笑いファンと、どちらでもない人に贈る『勇者ああああ』
大好きな深夜番組が、この秋から土曜22時台のプライム帯に進出した。
テレビ東京『勇者ああああ〜ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組〜』は、その名の通りゲーム番組なのだが、ゲームをあまりやったことがない人でも絶対に楽しめる。なんといっても、ゲームを使って、誰が見ても笑えるゲーム性のあるコーナーを産み続ける無尽蔵の企画力。
みんなに知ってほしいという建前と、プライム帯でぜひ見たいという私欲を込めて、特に好きなコーナーについて紹介する。
- 世界一豪華なゲーム実況
ゲームはあまりやらないけど、実況なら時々……という人も増えているのではないか。配信で活躍する実況者の方々のスキルはものすごい。けれど、けれど、もしYouTubeの“あなたへのおすすめ”で、好きな実況者に並んで安倍晋三・TOKIO松岡・ムーシー藤田がいたら……あなたのカーソルは迷わないと言えるだろうか?
「世界一豪華なゲーム実況」は安倍晋三が『龍が如く』で反社会勢力と直接対決する図を、真っ先に見たくなってしまわないか?というズルいコーナー。もちろん偽物だけど、本物を知っていれば刺さること間違いなし。安倍さんを知らなくても実況好きなら間違いなし。派生コーナーで、安倍晋三(偽物)と浦安市長(本物)がセガサターンで対決するという非常に訳が分からない企画も。浦安市長(本物)ってなんだ。
- RIFUJIN FIGHTING FEDERATION
年末のチャンネル争いでお父さんに負けて仕方なく見てたら意外と夢中になっちゃって恥ずかしいアレ、の、パロディ。とにかく理不尽。RIZINってあんまライジンじゃないなと思ってしまうくらい、RIFUJINは理不尽。珍しく王道のゲーム番組らしく、シンプルかつ真剣にゲームで対決するので、いつも以上にゲームの楽しさが伝わる。視聴者は「やっぱ人とやるならマリパだよな~」と呑気でいられる一方、演者はそれどころではない。負けた方には罰ゲームではなく、比類なく過酷な“罰”が待っているからだ。ボウリングの球とピンを家まで持ち帰る、ミサンガを付ける(無論自ら外してはいけない)、(家族がいる家で)大声エロ詩吟等々、演者のプライベートに土足で、鋭利なピンヒールで踏み入れる。それもあまり放送には流れない。ゲーム好きから理不尽好きまで誰もが楽しめるコーナー。
- クイズ・クロスフェード
例:プレステ1用のソフト数本の中から、プレステ2本体より発売が後のものを選ぶ。
私は全コーナーで一番好き。知らないゲームがたくさん出てきてワクワクする一方、これはプライム帯でやってくれるのかな~と不安な企画。なんせ出演者が完全に「※P1層©ハチミツ次郎」にしか刺さらない。P1層は土曜22時なにしてるのかな。ザコシがゲーム詳しいのもキュンとくる。見てほしい、というかこれからも見たい!!
※P1層…パチンコ屋に行ってるような奴らのこと
以上、私が特に好きな3企画を挙げた。魅力と疑問に溢れるキャスティングに関しては、番組Pが「クイックジャパンウェブ」でコラムを書いていらっしゃるので、そちらをぜひ読んで頂きたい。
「エンタの神様はアイスを食べながら見なければならない」という謎ルールに毎週縛られていた小学生が、10年越しにまた、ビール片手に土曜22時台の「ですよ。」を見ている感動も伝えたかったが、まだ文章にできなかった。
令和版あーいとぅいまてーんを聴ける『勇者ああああ』は土曜22時30分からテレビ東京で放送中。TVerでも観れるのでぜひ。
【魅力を力説したい】 『罪の声』
2020年10月31日に公開された映画『罪の声』
劇場で観ることができる日をずっと心待ちにしてきた作品である。小栗旬・星野源のW主演で話題となっているため、ご存知の方も多いだろう。そして、脚本はあの野木亜紀子氏。『逃げるは恥だが役に立つ』や『アンナチュラル』、『MIU404』で知られる野木氏が、どんな『罪の声』を描き出すのかにも注目だ。ただみなさんに知っていただきたいのは、なんと言っても、原作のおもしろさだ。
原作は、塩田武士氏による同名の長編小説。
2016年に単行本が発売され、本屋大賞では3位となった。この時点で、というか講談社から発行され話題となっていた時点で大変に興味を抱いていた私。
本は買う派&ハードカバーには手が出ない高校生だった私は文庫化を今か今かと待ち続けていた。そうしてようやく文庫化された昨年。発売されてすぐに購入して読んだところ、案の定、というか予想を上回るおもしろさに息を呑んだ。
題材となっているのは、昭和の未解決事件として知られる「森永・グリコ事件」。その犯罪に使われた子どもの声が自分のものであったと気づくことで、止まっていた事件の時間が再び動き出し、真相に迫っていく。この事件が未解決であることに変わりはないはずなのに、これが真実なのではないかと思うほどのリアルさ、説得力で描かれる作品に度肝を抜かれたものだ。
しかし一番の衝撃が待っていたのは、読み終わったあとだった。
読破した余韻のなかで思わず『罪の声』について調べていた際、当時実際に「森永・グリコ事件」で使用され、報道された「声」を発見したのである。もちろん聴いてみた。聴いて、そして……ひどく後悔した。
襲いかかってくる驚くほどの恐怖。ついさっきまで物語として楽しんでいたものが、確かな過去として迫ってくる感覚。あの事件で声を使われた子どもは実際に存在していたーー今もどこかで、誰も知らない過去を抱えて生きているのかもしれないという事実。圧倒された。
作品を作品として終わらせていれば、この声を聞かなければ、こんなに心を揺さぶられることもなかったのにと思いながら、溢れ出る涙を拭った。
映画は、ストーリーに音も映像もつく。読んだだけでそのおもしろさに圧倒されたあの作品に、音だけでなく映像までついてしまうと、どうなるのかーー。恐ろしさとともに、どうしようもなく楽しみで仕方がない。
ただ、この映画を観終わった時『罪の声』が間違いなく「好きな映画」になっていることだけは、確信している。